歌舞伎俳優松本幸四郎(74)中村梅玉(70)が9日、兵庫県赤穂市・大石神社で、東京・国立劇場10月歌舞伎公演「仮名手本忠臣蔵」(10月3~27日)の成功祈願を行った。同神社は、江戸時代の赤穂浪士討ち入り事件に参加した四十七士をまつっている。

 幸四郎にとって、大石内蔵助がモデルの大星由良之助は当たり役だが、同神社を訪れるのは初。祈願を終え「すがすがしい気持ちです。建て直された見事な社殿は、四十七士を愛する皆さまのご寄付だそうですね。そこに『忠臣蔵』を見ました。(赤穂城跡の)石垣も見えて胸打たれました」。

 由良之助を演じることについては「役者の技量、芸だけでは、しおおせられない大役。由良之助そのものが『仮名手本忠臣蔵』の中で生きていなきゃいけない」と気を引き締めていた。

 浅野内匠頭がモデルの塩冶判官を演じる梅玉は「赤穂の街は何ともおおらかでのどか。そういう場所で育った殿さまだということを感じます」と、物語のふるさとを肌で感じていた。

 国立劇場では、10~12月3カ月連続で、「仮名手本忠臣蔵」を、全段完全上演する。10月は大序から四段目を上演。幸四郎は「画期的な通し上演なので、心して演じたい」、梅玉も「30年前の舞台は、今や伝説となっている。何とか後世に残るいい舞台をつとめなくてはいけない」と語った。

 11月は早野勘平を尾上菊五郎、由良之助を中村吉右衛門がつとめ、12月は加古川本蔵を幸四郎、由良之助を梅玉がつとめる。