ユダヤ人に対する差別発言、アルコール依存症、DVスキャンダルなどで転落。一時は映画業界への復帰が危ぶまれていたメル・ギブソン(61)が、10年ぶりに本格的な復帰を果たした。

 以前より映画監督としての手腕が高く評価されていたギブソンは今年のオスカーで、映画「アポカリプト」(2006年)以来、10年ぶりの監督作品「ハクソー・リッジ」が6部門でノミネートされる躍進ぶりだ。

 80年代から90年代にかけて、アクション、コメディー、ロマンスとさまざまなジャンルで縦横無尽に活躍していたギブソンだが、2006年に飲酒運転で逮捕された際、警官に対し反ユダヤ的な差別発言をしたことが発覚し、批判を浴びた。

 さらに2010年には、元恋人オクサナ・グレゴリーヴァに対するDVスキャンダルで注目を集め、ギブソンはハリウッド業界から干された形となった。

 「ハクソー・リッジ」は総額1億7290万ドル(約196億円)の世界興行成績をあげる大ヒットとなったが、ハリウッドは「いかに利益をあげられるかがものをいう世界」。

 今や、レオナルド・ディカプリオ、トム・ハーディー、ブラッドリー・クーパーら今をときめく旬の俳優たちが、ギブソンと仕事をしたがっているといわれている。

 あるアカデミー会員はニューヨーク・ポスト紙に、「彼を許したわけではない。しかし、アーティスト本人と作品を、引き離して考えなくてはならないこともある」と語っており、10年という歳月と良作を生み出すタイミングが、ギブソンの再起を助けたといえるだろう。(ニューヨーク=鹿目直子)