「美魔女」は、ファッション誌「美ST」による造語で、世に出て8年目になる。もともとは35歳以上の「魔法をかけているように美しい」女性を差しているそうだが、年を追ってもっと高齢の女性がイメージされるようになったように思う。

 「魔女」の響きから、往年の米ドラマ「奥さまは魔女」の意地悪な母親エンドラや、「社長夫人」の肩書で70年代に「セレブタレント」として活躍した大屋政子さん(享年78)のような強烈なキャラクターを思い浮かべるのは高齢者ゆえかもしれない。これは極端な例かもしれないが、なかなかイメージが定まらなかったというのが正直なところである。

 が、先日、ごく自然にこの言葉を頭に浮かべる瞬間があった。7月公開の主演作「ボンジュール、アン」(エレノア・コッポラ監督)のPRで来日したダイアン・レイン(52)の姿である。

 「リトル・ロマンス」(79年)のみずみずしさ、「アウトサイダー」(83年)のはち切れんばかりの魅力…。そこに30年あまりの年輪がきれいに重ねられ、表情もいちだんと豊かになった。「時間を経て、また日本に来ることができ、人生の四季を日本で味わった気がします」。少し低くなった声で話す内容の端々に知性がにじんだ。

 実は昨年、その「老けぶり」に思わず言葉を失った瞬間もあったのだ。「バットマンVSスーパーマン ジャスティスの誕生」にスーパーマンの母親役で出演したときの「お年寄り」ぶりである。今回の来日で、くしくも前作が「渾身(こんしん)の老けメーク」だったことを確認できたわけだ。美魔女は女優根性も半端じゃない。