カンヌ、ベルリンと並び世界3大映画祭の一つと言われるベネチア国際映画祭が、8月30日に開幕しました。第74回目となる今年のベネチア国際映画祭には、ジョージ・クルーニーの監督作「サバービコン」やこの作品がきっかけでダーレン・アロノフスキー監督とジェニファー・ローレンスに愛が芽生えた「マザー」、ギレルモ・デル・トロ監督のファンタジー「ザ・シェイプ・オブ・ウォーター」など豪華な21作品がコンペティション部門に選出されています。今年は女優アネット・ベニングが、女性として11年ぶりに審査委長を務めることでも注目されています。日本からも福山雅治主演の「三度目の殺人」(是枝裕和監督)も選出されており、最高賞「金獅子賞」は9日に発表されます。

 ベネチア国際映画祭はアカデミー賞の前哨戦としても注目されており、ここで高評価を得た作品が今後アメリカでの賞レースを席巻する可能性も大。ということで、いくつか今年の注目作品をピックアップしてみました。

●「メクトゥーブ・マイ・ラブ」

 「アデル、ブルーは熱い色」(13年)で第66回カンヌ国際映画祭パルムドールを受賞したアブデラティフ・ケシシュ監督の最新作。若き脚本家のキャリアと恋を描く本作は、製作中に資金難に陥り、なんとパルムドールのトロフィーを競売にかけて資金を集めたということでも注目されています。

●「ダウンサイズ」

 オープニング作品として上映されたマット・デイモン主演で描く、人口が増え続ける地球で人間の体長を13センチに縮小する方法が発見されるSF作品。「サイドウェイズ」(04年)「ファミリー・ツリー」(11年)「ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅」(13年)でアカデミー賞常連のアクレサンダー・ペインが、初めてSFに挑んだことでも注目の作品です。

●「サバービコン」

 クルーニーの監督6作目は、1950年代の小さな田舎町を舞台に静かな家庭を脅かす侵入者を描いたダーククライムコメディ。デイモン、ジュリアン・ムーア、オスカー・アイザックら豪華キャストで、平和に見えていた町の人々の闇と素顔が明かされていきます。クルーニーは監督作「グッドナイト&グッドラック」(05年)でベネチア国際映画祭脚本賞を受賞しているだけに、本作でも受賞に期待が持たれています。

●「ザ・レジャー・シーカー」

 ヘレン・ミレンとドナルド・サザーランドがアルツハイマーの夫と末期ガンの妻を演じる人生最高のロードムービー。70代の夫婦が様々なトラブルに見舞われながらも、ボストンからフロリダまでキャンピングカーで旅に出る物語で、女優&男優賞のW受賞の可能性も。

●「ヒューマン・フロウ」

 中国の現代芸術科アイ・ウェイウェイ氏が、世界中の難民たちの生活を1年以上かけて追い続けたドキュメンタリー。アフガニスタン、バングラディッシュ、パキスタンからフランス、イタリア、タイやトルコまで22カ国以上での取材を通じて、世界的な難民危機に迫る力品。

●「マザー!」

 ミッキー・ローク主演の「レスラー」(08年)で金獅子賞を受賞しているアロノフスキー監督が、オスカー女優ローレンスと初タッグを組んだサイコスリラー。主人公が両手に血まみれの心臓を持つミステリアスなポスターが話題になりましたが、ローレンスとハビエル・バルデム演じるカップルの破局を描くミステリーにあふれたサスペンスです。

【千歳香奈子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「ハリウッド直送便」)