【フランス・エビアン17日発】女子ゴルフの宮里藍(32=サントリー)が今季メジャー最終戦「エビアン選手権」(エビアン・リゾートGC=パー71)の最終ラウンドに臨み、2バーディー、4ボギーの73で回って通算1オーバーの32位で現役最後の試合を終えた。念願のメジャー制覇はならなかったが、多くの選手や関係者から拍手を送られ、涙のフィニッシュ。仲間との絆を大事にしてきた14年間の現役生活に別れを告げた。

 2009年に米ツアー初優勝を飾り、東日本大震災があった11年にも勝った思い出のコースで、藍は最後まで自分のゴルフを貫いた。

 大観衆が見守る最終18番、距離を残した2打目は何とかグリーンエッジに到達。3打目は、自身の生命線ともいえる絶妙な寄せを見せて1.5メートルにつけた。

 最後のプレーを待つ間に思いが込み上げてきたのか、藍の目は潤んだ。同組の李美香(24)、チェ・ヘジン(18=ともに韓国)から最終パットを譲られ、1メートル強の距離をしっかりと沈めてパーセーブ。カップからボールを拾い上げると、思わず涙を拭った。

 ホールアウト後にはサプライズも待っていた。男子メジャー9勝のレジェンド、ゲーリー・プレーヤー氏(81=南アフリカ)から花束の贈呈。第1ラウンドで藍から同組指名を受けた曽雅妮(28=台湾)とポーラ・クリーマー(31=米国)とグリーン横で抱擁した。特にクリーマーは手首痛のためわずか4ホールで棄権してしまったとあって号泣。藍は最後まで慰め続けた。

 現役最後のラウンドも普段通りのプレーを続けた。5、6番で連続ボギーを叩く苦しい展開。それでも集中力を維持し、9番パー5でのバーディーにつなげた。10、14番で落としても15番パー5の3打目で絶妙なアプローチを見せてバーディー。難所の3ホールもパープレーでまとめた。

 試合後の取材もこの日が最後。感傷的になる報道陣に対し「ボギーの多い一日だった。今日は自分のラウンドを終えるので精一杯だった」と成績につながらなかったことを反省した。それでも14年間にわたる競技生活との別れに「自分自身に『お疲れさま』と言いたい」と目を赤くした。

 前夜には引退のセレモニーがコース近くのホテルで行われ、黒いドレス姿で登場。トップ合格した05年の最終予選会からの軌跡が映像で紹介された。壇上では流ちょうな英語でスピーチしたが、仲の良い選手たちを目の前にすると言葉に詰まり、涙を浮かべた。

 日本から米ツアーに挑戦してきた後輩たちも大事にしてきた。今季から参戦している畑岡奈紗(18=森ビル)とは時間が合えば練習ラウンドを一緒に回り、的確なアドバイスを送った。なかなか成績が上がらなかった畑岡だが「わずかの間でしたが、藍さんからもらった言葉を大事にして、これからに生かしたい」と今後の躍進を誓った。

「やり切った気持ちもあるし、本当にさわやかな気分」と振り返った藍。日本女子ゴルフ界の第一人者はファンと仲間に感動を与え、現役生活に終止符を打った。