女優藤原紀香(44)と来春結婚に向けて進んでいる歌舞伎俳優、片岡愛之助(43)が座頭を務める「第8回永楽館歌舞伎」は4日、兵庫県豊岡市で初日(10日まで)を迎え、紀香から赤系の胡蝶蘭が届けられた。

 劇場入り口に並べられた祝いの花の真正面、ど真ん中に強いピンク色に染まった胡蝶蘭。差出人は紀香だった。胡蝶蘭は、宝塚歌劇団ではスターが退団時に「永遠の愛」を象徴して白の胡蝶蘭を持つことが多い。ピンク系の胡蝶蘭には、とくに「あなたを愛する」の意味があるとされている。

 関係者によると、花の位置は劇場側が決めているといい、すでに出石では、祝福モードだった。

 永楽館歌舞伎は08年にスタート。当初から愛之助が座頭を務め、毎回、ご当地にちなんだ演目を上演してきた。今年は、豊岡付近に潜伏していた桂小五郎をテーマに「青雲の座 出石の桂小五郎」を演じ、実生活の恋愛遍歴を存分に生かした小五郎役となった。

 桂小五郎といえば「逃げの小五郎」「抜かずの小五郎」と呼ばれ、幕府側の追っ手を見事にくぐり抜けて、明治新政府の要職に就いた。一方で、確かだった剣の腕を持つ一方、幕末に生きた剣士としてはめずらしく、人を殺生することはなかったと伝わる。

 「逃げの-」と呼ばれた小五郎だけに、潜伏先の各所で所帯を持つか、女性と暮らすなどして変装していたともみられ、愛之助演じる小五郎は、その史実をふんだんに生かした創作。熊切あさ美との破局から、紀香との“二股騒動”へと飛び火し、その紀香とは来春にも結婚の可能性が浮上。お騒がせ続きの愛之助の私生活をほうふつとさせる芝居となった。

 史実では後の妻となる中村壱太郎(かずたろう)演じる芸妓(げいこ)・幾松をはじめ、出石での潜伏先で年上女房になった上村吉弥ふんする「おすみ」、さらには、おすみとの結婚前に関係があった上村純弥が演じた娘「おたき」と三角関係に揺れて、笑わせた。

 逃避行を表現する流れで、愛之助が城崎行きを渋り、年上女房から「松本屋の娘おたきとのうわさは本当か」と迫られタジタジ。年上女房から「結婚前のことだから、許す」と言われ、結局、城崎へ逃れた。

 しかし、その城崎で、年上女房と、かつての恋人おたきが鉢合わせ。あわてた愛之助演じる小五郎は、さっき出てきたばかりの風呂へ再び逃げる流れで、客席は爆笑だった。

 だが、爆笑も束の間、娘おたきは「あなたと別れて、おなかに子が…」と衝撃の告白。過去に隠し子騒動があった愛之助の実生活を思わせる場面だった。

 さらには、そこへ“本命”の幾松が現れ、さらに修羅場に…。おたきは「なんで女はいつも泣かされるのでしょう」、おすみは「忘れましょう」と、愛之助に“泣かされた”女2人が愚痴を言い合う場面でも、客席からは笑いが漏れた。

 当の愛之助は小五郎の熱演を終え、口上に登場。この永楽館歌舞伎では、ご当地ゆかりの演目を初演することを決めており、桂小五郎をテーマにしたものの「潜伏がうますぎて」創作も難しかったという。

 後の木戸孝允、桂小五郎といえば、幕末のヒーローの1人だけに「逃げの小五郎と言われましたが、あの(新選組副長の)土方(歳三)も怖れたといいますし、武術も達者。抜かずの小五郎とも呼ばれていました」と解説を付け加えていた。