三谷幸喜氏の舞台「酒と涙とジキルとハイド」(26日まで、東京芸術劇場プレイハウス)の舞台稽古を取材中、初めての出来事に直面した。笑いすぎてカメラを持つ手が震え、ピントが合わないのだ。

 三谷氏といえば言わずと知れた喜劇作家。当然舞台もクスっと笑える仕上がりだ。これまでにも三谷氏の舞台を取材したことはあったし、その時もおもしろかったのだが、今回は「クスッ」どころじゃなかった。

 主人公のジキル博士(片岡愛之助)が「人間を善と悪の2つの人格に分ける薬」を開発するのだが、学会発表前日に薬が効かないことに気づき、役者のビクター(藤井隆)を替え玉として使い「二人一役」で乗り切るというもの。そこに博士の婚約者イヴ(優香)が現れ、事態はさらに混乱していくのだが、ただでさえおもしろい脚本に俳優たちが振り切った演技で拍車を掛け、我々記者に襲いかかってきた。

 まるで某「笑ってはいけない」年末の番組の出演者になったような気分で、約20分間カメラを構え続け、なんとかピントのあった数枚を出稿。その場は事なきを得た。残念ながらブレた写真はその場で消去してしまったのだが、とにかく仕事にならないほどおもしろかったことを伝えたい。

 舞台稽古終了後、隣にいた記者にその旨を伝えると、「僕もだよ」と困り顔だった。あれほどまでに記者席から笑いがこぼれる舞台稽古は他にないだろう。

 そもそもこの舞台の初演は14年にさかのぼる。このたび台湾の劇場からのラブコールを受け、再演が決まったとのこと。めったに再演をやらないとされる三谷氏だけに、本人にとっても自信作なのだろう。

 3月末~4月頭の台湾公演は、字幕付きで行われたそう。全公演満席で、とにかく大ウケだったらしい。三谷氏は「台湾で大ウケしたぶん、東京は大丈夫だろうか」と憂えていたが、そんな心配はなさそうだ。