ミュージカル女優として活躍する綿引さやかが、今月25日と26日にロサンゼルス(LA)の野外劇場ハリウッド・ボウルで行われたディズニーの名作「美女と野獣」を大スクリーンで鑑賞しながらフルオーケストラの演奏と共に歌やパフォーマンスを楽しむ「ビューティー・アンド・ザ・ビースト」イン・コンサートに大抜擢されました。東京・帝国劇場のミュージカル「レ・ミゼラブル」(2013年)でアンサンブルからエポニーヌ役に抜擢されたシンデレラガール綿引にとって本公演は初の海外挑戦。単身LAに乗り込み、夢の舞台に立った彼女に話を伺いました。

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 ―本公演に出演するきっかけとなったのは、今年2月に日本武道館で行われた「リトル・マーメイド」イン・コンサートへの出演だったといいます。

 「大のディズニー好きである私にとってこのコンサートで、ディズニー音楽の巨匠アラン・メンケンさんと共演をさせていただけたことはまさに夢のような出来事でした。 終演後、プロデューサーのリチャード・クラフトさんから「もし英語の歌が歌えるならぜひハリウッド・ボウルに出演してみないか」と声をかけていただきました。あまりにも夢のような大きなお話だったのでしばらく信じられず、その言葉を受け止めるのにだいぶ時間がかかりました。これは「とにかくチャレンジしてごらん!」とリチャードさんが大きなチャンスを下さったのだと思い、そこからは一心不乱に勉強を始めました」

 ―ディズニー好きになったのは、母親の影響だったといいます。

 「ディズニーが大好きな母は、私がお腹にいる時からディズニー音楽やディズニーランドでの胎教をしてくれていました(笑)。生まれた時からディズニーの音楽や映画に囲まれて育ち、気づけば“ディズニー”は、いつも人生の隣にいてくれる存在でした。ディズニー映画の中でも私にとって特に大切な作品が“美女と野獣”。不思議なことに人生の大切な節目で出会わせていただく作品なんです。小学生の時、LAに家族旅行で来た際、初めて見たミュージカルも“美女と野獣”でした。その時に受けた衝撃と感動は今も忘れることができません。そこからこの作品の虜(とりこ)になり何度も劇場に足を運びました。この作品が持つ「人の本質を見つめる力・愛する誰かのために勇気ある行動ができることの大切さ」というメッセージは、大人になった今も私に大事なことを教え続けてくれています」

 ―本格的にミュージカル女優を目指したのは大学入学後だったといいます。

 「中学・高校ではミュージカル部に所属していました。ここでの経験が私のミュージカルを目指す最初のきっかけとなったことは間違いないです。実はこの時、初めて舞台に立った作品も、卒業前に立った最後の作品も“美女と野獣”だったんです。不思議ですよね。プロのミュージカル俳優になりたいと決意したのは大学卒業後だったので、スタートは割と遅めでした。そこから歌やダンスを本格的に勉強し始め、数え切れないほどオーディションを受ける日々が始まりましたね。でも、次から次にオーディションに落ちて…プロの世界の厳しさを目の当たりにしたんです。そこで、やるからには本場で学びたいと2010年にニューヨークへ留学」

 ―単身でLAに乗り込み、第一線で活躍する方達たちとのリハーサルは刺激の連続だったといいます。

 「日本を発つまでは、1人で本当に大丈夫だろうか…と甘い考えを持ったりもしましたが、今は単身で乗り込んだからこそ得られたこと気づけたことが沢山あり、本当に良かったと思っています。キャストやスタッフの皆さんもとても優しく、私と話す時は少しゆっくり英語を話してくれたり、歌詞の発音を細かく教えて下さったりと、本当に周りの方達に助けられてきました。それにしてもキャストの皆さんが、どなたも素晴らしい経歴の持ち主なのですが、更にこれからの夢や目標も沢山語っていらして、それを伺っているだけで刺激を受けると同時に、挑戦し続けることの大切さを教えていただきました。そういう方達と約2週間リハーサルをご一緒できたこと、そして一緒にステージに立たせていただけたことを心から誇りに思っています」

 ―大物アーティストのコンサートも行われるハリウッド・ボウルのステージに立った感動は忘れられない出来事だったようです。本番後にもお話を伺ってみました。

 「ハリウッドボウルのことは色々な方から伺っていましたが、ここに立たせていただいて改めて本当に特別な場所なのだと強く感じました。舞台から見る景色は…言葉にならないほど美しく壮大で、何度も胸が熱くなりました。そして私にとって本当に特別な“美女と野獣”という作品に、夢のような形で再び出会わせて頂けたことを本当に幸せに思います。今回のコンサートへの出演を経て、人生においてこの作品は更にかけがえのないものとなりました。これは、夢の達成ではなく、はじまりの一歩。ここからが新しいスタートです。ウォルト・ディズニー氏の言葉の中に夢を叶えるための大切な4つのCというのがあります。“Confidence(自信)Curiosity(好奇心)Constancy(一度決めたことを継続すること)Courage(勇気)”これは、今後も私の背中を押し続け、新たな夢へと導いてくれる魔法の言葉」