“ヤングレーサーの祭典”と呼ばれる9月のプレミアムGⅠ「ヤングダービー」(ボートレース浜名湖・9月19日~)へのステップレースとなるGⅢ「第5回イースタン&ウエスタンヤング」がボートレース津と下関で、28日に一斉に開幕する。ここではその優勝候補筆頭、一方は“ダークホース”と対照的な位置に立つ2人をピックアップした。

<津GIIIイースタンヤング=木下翔太(27=大阪・108期)>“王国・大阪支部”が誇る新世代のスピードスターが「優勝以外は狙っていません!」――。こうキッパリ言い切った。

 それもそのはずだ、GⅠ優出はすでに6回を数え、昨年末のGPシリーズではSG初出場を果たし水神祭も飾った。さらに今年5月の地元・住之江ルーキーSでは自身初の完全優勝を達成し、尼崎SGオールスターにも初出場。来期適用勝率も7・59と自己最高を大きく更新するなど、ルーキー世代ではその実力は別格! 断然格上の存在だ。

 しかるに、この若手限定のGⅢレベルではなく、プレミアムGIのヤングダービー、いや、それ以上の通常のGI、すなわち各地の周年記念等でも十分に優勝を狙える位置にいる。今大会なら、文句なくV最有力候補。ライバル勢からマークされる立場にいる。

「昨年の12月くらいからいいイメージがあって、5月の住之江も良かったけど、その後のオールスターがダメだったし、近況は悪くはないけど、いいとも言えません。波に乗り切れていない感じですね」と自身のリズムには意外とも思える厳しいジャッジを下したのも、やはり目標がワンランク上のSG・記念戦線にあるからだろう。

 舞台となる津水面には「好きです。記念で初優出した(64周年記念=5着)のも津だったし、乗りやすいイメージがあります」と好イメージを残している。「今大会はドリーム戦1号艇を狙っていながら2号艇になってしまったけど、優勝しか狙っていません。(Yダービーの)権利もあるけど、それは関係ない。優勝しないといけないという気持ちで行きます」と力強く語った。

<下関GIIIウエスタンヤング=中村晃朋(26=香川・111期)>3月のびわこGⅡ「レディースオールスター」を制すなど、女子戦線の王道を闊歩する中村桃佳は実妹。彼女は「普段はホントにごく普通の兄。レーサーとしてはレースに対する意気込みやペラの調整とか、減量とか、すごいと思います。見習いたいし尊敬もしています」と兄を慕っている。

 だが、この“桃佳のアニキ”というレッテルが先走りならぬ“後走り”したのは事実。これが彼にとって無言のプレッシャーになっていたのではと思われたが、当の本人は「もちろん妹のことは気になるし、活躍すれば大きな刺激になった」と前向きに捉えている。互いに切磋琢磨してきた。

 主戦場は桃佳のいる女子限定カテゴリーとは違い、ハイレベルな男子戦線。妹のような活躍は見せられていないが、ここにきて3期連続でA2級キープ。新期はキャリアハイの6・18と初の6点勝率をマーク。デビュー5年半、念願のA1昇級も見えはじめ、一歩一歩着実に前進している。

 それでも「僕なんかまだまだ全然、力がついていない。精神面、メンタル面。気持ちが弱いんです…。自分で課題は分かっている」と自己評価。はやる気持ちとは裏腹にジレンマを抱えている。

 こんな兄を目の当たりにして桃佳は「こうと思うと真っすぐにしか見えていないので、もう少し視野を広く持ってほしい」と冷静にジャッジ。一本気な兄に的確なアドバイスを送る。

 舞台となる下関はホームプールまるがめと同様、瀬戸内海、干満差あり、ナイター開催と共通点が多い。「海水面が好きだし、ナイター場も大好きなので条件は整っています。とにかくしっかりとやれることをやるだけ。今の目標は初優勝なので、このウエスタンYでできたら最高!」とひそかに意気込んでいる。