大阪に夏の訪れを告げる風物詩、歌舞伎俳優による船乗り込みが29日、大阪・道頓堀川で行われた。

 毎年、大阪松竹座の7月公演「七月大歌舞伎」に出演する役者が道頓堀川を船で渡るもので、サッカーW杯ロシア大会日本代表が決勝トーナメント進出を決めたこの日未明、大勢のサポーターが歓喜したのと同じ場所。約10時間前には戎橋から川へダイブする者が相次ぎ、騒然となっていたスポットだった。

 その戎橋のふもとへ、船に乗り、たどり着いた松本白鸚(71)10代目松本幸四郎(45)親子は、はかま姿で両手を振り、川岸のファンへあいさつ。観衆は、のべ1400人。白鸚はマイクを使わず、声を張り上げて「曽祖父が上方ゆかりで、愛着を感じています」などと、上方のファンへ呼びかけた。

 下船すると、戎橋から南西すぐの場所にある大阪松竹座前へ移動し、再びあいさつ。白鸚は、今月18日に大阪府北部を襲った地震への被災者を思い「心が疲れてらっしゃる方もいるのに、こんなに集まっていただいて、ありがたく思います」と感謝。役者の務めは「皆さまの苦しみ、悲しみを勇気、希望に代えるのがなりわい」とし「大阪の皆さまに少しでも勇気、希望を与えられるよう公演を勤めあげます」と約束した。

 2年連続、大阪松竹座での「七月大歌舞伎」に出演する幸四郎は「私どもには(先祖は関西出身で)、何分の1かはこちらの血が流れております」などと言い「どうか、ごひいきをいただけますよう」と、ファンに向かい、お願いした。

 白鸚ら「高麗屋」の襲名興行を迎え、上方の役者も多数、松竹座前に駆けつけて、あいさつ。片岡仁左衛門(74)は「松嶋屋っ」「男前っ」とかけ声を浴び、満面笑みで「高麗屋さんの襲名興行を精いっぱい盛り上げられるように励みます」と話していた。

 大阪松竹座での「七月大歌舞伎」は7月3日に開幕し、同27日に千秋楽を迎える。