『名探偵コナン ゼロの執行人』が4月13日の公開から未だにロングランヒットしている。

ある事件がきっかけで子どものカラダになってしまった主人公の高校生探偵・工藤新一(声:山口勝平)が江戸川コナン(声:高山みなみ)と名乗り、数々の難事件を解決していく人気シリーズ。彼の命を追う悪の組織にバレないように、賢い子どもコナンくんの顔と、名探偵・工藤新一の顔(声)を使い分けていくところが面白いが、もうひとり名前と身分を使い分けている人物・安室透(声:古谷徹)が人気だ。

  • 『名探偵コナン ゼロの執行人』安室透(右上)

    『名探偵コナン ゼロの執行人』安室透(右上)

6月29日からの『リアル脱出ゲーム×名探偵コナン「公安最終試験(プロジェクト・ゼロ)からの脱出」』にも登場し、人気が加速している安室。彼はふだん喫茶ポアロでバイトしていて、探偵・毛利小五郎(声:小山力也)を師と仰いでいるが、じつは公安警察官で、その名は降谷零。潜入捜査のための別の人物になりすますこともする。

ミステリアスな設定に加え、金髪で肌は褐色の美形で、さすが公安だからか、いろんなことに長けていて、腕っぷしもかなり強いという非の打ち所のないかっこいいキャラクターで元来人気があったが、『ゼロの執行人』での大活躍により一気にファンが増えた。

『ゼロの執行人』の主題歌は福山雅治の『零』で、最後にこれが流れると映画では描ききれなかった安室の複雑な心情を歌ったものではないかとさえ思えてきて、すっかり気持ちは安室一色になってしまう。

映画終了後、女子高生がざわつく

安室が大活躍する『ゼロの執行人』の概要はこう。東京湾の巨大施設 エッジ・オブ・オーシャンで大規模爆破事件が発生した。そこで東京サミットが開催される予定だったが急遽会場は変更に。事件の現場から指紋が発見されたため連行されてしまった毛利小五郎を助けるためコナンは捜査を開始する。事件はなぜ、サミット当日ではなく事前に起きたのか? 事件の影には全国の公安警察を操る警察庁の秘密組織・通称「ゼロ」に所属する安室透が関わっていた。コナンと安室は敵味方となるのか……。

私が劇場で見たとき、映画が終わるとたくさんの女子高生観客がざわついていた。おそらく例の主題歌と、安室の八面六臂の大活躍の余韻だろう。安室が劇場版に初めて登場したときの劇場版第20作『純黒の悪夢』(16年)でのカーチェイスにも度肝を抜かれたが、とりわけ愛車・マツダRX-7でのカーチェイスは『ゼロの執行人』でさらにスケールアップ、アニメーションだからこそここまで描けるど迫力だった。ふだんはわりと飄々とした表情をしている安室が瞬間、スイッチが入ったかのように悪魔的な顔に切り替わるところもゾクリとした。

アニメっていいなあとつくづく思うのは、サイボーグか! と思うような安室の強靭な身体とその能力だ。カーチェイスのみならず、いろんな超人的な力を発揮する。

(ここから多少ネタバレします。もうほとんどの方がご覧になったうえでお読みになっていると思いますが念の為)

爆発事件の際、かなり現場近くにいたみたいだがそれほどのダメージを受けていないし、愛車のフロントガラスを素手で割っちゃう。『万引き家族』のリリー・フランキーは車上荒らしで窓ガラス割るために道具使ってたぞ、と思うとその凄さにたまげる。

前述のカーチェイスも、一瞬表情は変わるものの、あくまでクールに超絶テクを駆使するところがシビれるのだ。

推薦を受けたくなるほどの魅力

もし実写化したら誰が演じることができるだろう。工藤新一を主役にしたスペシャルドラマがあったが、コナンくん中心だと、やれる子役がいないだろうから実写化は無理そうだけれど……無理くりあの人かこの人かと妄想した結果、やれるとしたら歌舞伎俳優がいいのではないかという結論に達した。ある場面である人に(一応ネタバレに配慮)つけられた盗聴器を外す動きの派手さが、歌舞伎の所作か! と思ったからだ。おおきく振りかぶって、ためににためた、こういう動きをハイスピードカメラのスローモーションを使わずにやって様になるのは歌舞伎俳優のほかにいない。まあ、ハイスピードカメラを使えば済むけれど。漫画の歌舞伎化は『ONE PIECE』がかなり好評だったし、今度は『NARUTO』をやるし、親和性があるのではないか。いやでも、青山剛昌の絵は独特のデフォルメがされているからやっぱり絵のままがいい。

映画では、しびれる決め台詞もあって、あれだけ壮大なことをカラダがむずがゆくならないように言えるのは、声優・古谷徹しかいないだろう。

あんな台詞言われたら、全身全霊を賭けて“協力者”(公安が捜査のために秘密裏に採用する人物)になりますと進み出てしまいそうだ。『ゼロの執行人』は公安と“協力者”とのディープな関係性について描かれている。

リアル脱出ゲームのほうは、安室透から一般人協力者増員のため、候補者として推薦を受けるという趣向。

推薦受けたい。

■著者プロフィール
木俣冬
文筆業。『みんなの朝ドラ』(講談社現代新書)が発売中。ドラマ、映画、演劇などエンタメを中心に取材、執筆。著書『挑戦者たち トップアクターズ・ルポルタージュ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』、ノベライズ『隣の家族は青く見える』『コンフィデンスマンJP 』 など。5月29日発売の蜷川幸雄『身体的物語論』を企画、構成した。

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