池松壮亮が26日、東京・新宿バルト9で行われた主演映画「君が君で君だ」(松居大悟監督)初日舞台あいさつで、約1年前の真夏の撮影の際、韓国女優キム・コッピ(32)演じる女性が切った髪を食べるシーンを演じた際、キムのものではない全く知らない人の髪の毛を食べさせられた揚げ句、臭かったと明かし「屈辱だった」と吐露した。

 池松は劇中で尾崎豊になりきった男を演じ、満島真之介(29)が演じたハリウッドスターのブラピになりきった男と、キムが演じた韓国女性ソンに憧れ、キムの家の近くにアパートまで借りて、見守り続ける日々を演じた。その中で、ソンが男たちの部屋でロングの髪を切り落とし、その髪を尾崎豊になりきった男が食べ、ブラピになりきった男にも勧め、一緒に食べるシーンがある。

 池松は「あんまり苦労話をするの、好みではないんですけど、1つ挙げるとすれば、コッピさんの髪の毛を食べるシーンがあるんですよ。(キム・コッピは)韓国から来て2週間をともにした、同士のような共犯者のような大切な存在。愛する存在だから、コッピさんのなら食べていいだろうと思ったら、全く関係ない人の人毛を食べさせられた」と言い、苦笑いした。

 撮影は、暑い古いアパートで行われたという。池松は「床に髪の毛が落ちて、スタッフのおじさんたちがペタペタ踏むんですよ。その2時間後に食べる…足の臭いがするんですよ。屈辱でしたね」と振り返った。そして「そんなこと、現場で抗議しても、あれだから帰ってやろうと思ったんですけど、僕は真面目な俳優だから食べた。そうしたら助監督から『お代わり、ありません』って、食べたい人みたいに言われ…屈辱でした」と笑いながら語った。満島は「今、聞いてるだけで寒気がする…髪が臭かったんです。ほこりもついていた」と続いた。

 池松と満島が苦痛を訴えるシーンの中心に立つヒロイン・ソンを演じたキム・コッピは、原作・脚本も担当した松居大悟監督(32)が、かねて憧れた世界的な女優だ。同監督の作品が韓国で特集上映された際、監督からリクエストされて対談した際、その後の監督作への出演をリクエストされ、快諾すると、同監督が日本人の女性で書いていた今作品の台本を韓国人女性に書き直したほどだ。作品のPR映像では、監督から冗談交じりで「結婚して下さい」と求婚までされた。最後のあいさつで、キム・コッピは「私も韓国で役者として映画作りに十何年になって、撮影後にこんなに泣いたことはなかった」と出演した喜びを語った。

 それを聞いた池松は「泣こうと思ったけれど、無理だった…それは冗談としても」と苦笑した。そして「愛するっていうことは…個人的な話ですが、人からもらうものではなく与えるものであり、自分自身の意思というか決断というふうに思っています」と、偏愛ながら純愛を貫く映画にちなみ、自分が思い、考えるところの愛を熱く語った。【村上幸将】