2016年のノーベル文学賞を受賞した米シンガー・ソングライター、ボブ・ディラン(77)が29日夜、新潟県湯沢町で開催の国内最大級の野外音楽イベント「フジロックフェスティバル」に出演した。同賞の受賞後、来日公演を開くのは初めて。27日から3日間にわたったフェスの最終日に登場。舞台上に米アカデミー賞のトロフィー「オスカー像」が飾られ、01年に同賞の主題歌賞を受賞した「シングス・ハヴ・チェンジド」のピアノ弾き語りでスタートした。

 歌以外は一切話さず、1960年代の名曲「悲しきベイブ」「追憶のハイウェイ61」など計16曲を披露。最後に代表曲「風に吹かれて」をバイオリンを交えて歌うと穏やかな風が吹き抜け、歓声が上がった。会場を埋めたのは数十年来のファンから家族連れまで幅広く、しわがれた歌声にじっくりと耳を傾けた。

 全ての日本公演を見てきたボブ・ディラン愛好家の菅野ヘッケルさんは「丁寧に歌うパワーのすごさが伝わった。ノーベル賞を喜んでいると思うけど、うれしいなんて舞台で言うわけがない。自分を曲げない姿勢が感じられた」と話した。

 29日のフェスには約3万8000人が来場。複数のステージが設けられ、多数のミュージシャンが参加するフェスだが、ディランの出演時間は他のステージで演奏しない異例の対応が取られた。来日公演は78年に始まり、今回は2年ぶり101回目。ディランは社会と時代を映す歌詞で、「新たな詩的表現を創造した」として、歌手で初めてノーベル文学賞を受賞した。

 ◆ボブ・ディラン 1941年5月24日、米ミネソタ州デュルース生まれ。本名ロバート・アレン・ジンママン。62年にアルバム「ボブ・ディラン」でデビュー。自作曲は600曲以上。全世界のアルバム・セールスは、1億2500万枚を超えた。