三谷幸喜氏(57)が脚本と監督を務める最新映画が、政界コメディー「記憶にございません!」(来年公開)に決まった。このほど、都内で三谷監督が取材に応じた。先月10日にクランクインし、今月撮了。

 監督8作目は、中井貴一(56)が主演、記憶を失った総理を演じる。三谷監督は高校生のころから「ある日突然総理に指名されたら何をするか」と思うことがあったという。総理が記憶をなくす設定について、三谷監督は「目が覚めたら自分が誰か分からず、段々総理だと気付いていく。一般の人がある日突然総理になるのと、現象としては同じシチュエーション」と逆転の発想を明かした。

 中井演じる総理は国民の嫌われ者。街頭演説で投げられた石が当たり、記憶を失う。三谷監督はドラマ、映画、舞台と数多くの作品をともにしてきた中井のすべてを盛り込むとし「中井貴一ショーだと思っている。皆さんの知らない中井さんの表情を伝えるのが僕の使命」。中井も「日本のエンターテインメントコメディーの傑作を目指し取り組んでおります」とのコメントで応じた。

 ほかに、首相秘書官をディーン・フジオカ(37)、総理夫人を石田ゆり子(48)、官房長官を草刈正雄(65)、フリーライターを佐藤浩市(57)が演じる。中井と佐藤の3分の長回しシーンもあるという。

 三谷監督は「政治批判ではなく、100年後に見ても楽しめる作品にしたい」と話す。特定人物を想像させる描き方はしないが、タイトルについては「大ヒットして、みんながこの映画のことを知っている状態になったら、多分、証人喚問でこの言葉は使えない。使ったらみんな笑う。抑止力になる」と笑わせた。【小林千穂】