脳内出血による筋力低下などで療養していた歌舞伎俳優中村福助(57)が2日、東京・歌舞伎座で初日を迎えた「秀山祭九月大歌舞伎」(26日まで)昼の部「金閣寺」で4年10カ月ぶりに舞台復帰した。

将軍の生母の慶寿院にふんした福助が登場したのは開演から86分後。御簾(みす)が上がり、福助が登場すると、大向こうから「待ってました」「成駒屋!」と掛け声が飛び、大きな拍手がしばらく鳴りやまなかった。金閣寺に閉じ込められた慶寿院が春永の命令を受けた東吉(中村梅玉)に救出されると、「春永の迎えとは」と明晰(めいせき)な口調でせりふもしゃべった。出演は4分ほどで、座ったままでだったが、風格漂う演技で「復活」を印象づけ、涙を流す観客もいた。

終演後、会見こそしなかったが、福助は「この5年近く、毎日のように芝居の夢を見ました。目覚めて涙したこともありました。まだ万全ではないですが、見守っていただけましたら幸いです」と話している。福助が何度か演じた雪姫に初挑戦した長男中村児太郎も「父と同じ舞台に立たせていただけますことを心より感謝いたしています」と喜んでいる。