15日に死去した樹木希林さん(本名・内田啓子、享年75)の葬儀が30日、東京都港区の光林寺で営まれた。文学座付属演劇研究所の61年入所1期生同期の俳優橋爪功(77)が弔辞を読んだが、読み上げた弔辞は、希林さんが出演した映画「万引き家族」の是枝裕和監督(56)のものだった。

「まずは告別式の場で、直接、お別れの言葉を告げられない非礼を、お詫びさせて下さい。何より希林さん、ごめんなさい。もしかすると、私がその場に現れて、涙声でお別れを語ることなど、希林さんは全く望んでないかも知れない。私のシャツのひじのあたりをつまんで、『何、陰気でもないのに、何で悲しそうな顔してるのよ』といたずらっ子のように私をのぞき込む姿が浮かぶ」

「希林さんが重い病を抱えていた以上、いつかはこの日が来ると覚悟していましたが、急にお別れを告げなければいけなくなるとは思っておらず、途方に暮れています。ずいぶん前に実の母を亡くしましたが、2度、母を失ったような悲しみの沼から抜けられない…あなたは、特別な存在でした」

「希林さんと私が初めて出会ったのは07年、まだ10年ちょっとの付き合い。あなたの人生について語れるのは役者としての長いキャリアの最後の数ページかも知れません。弔辞を読む大役を受ける資格があるのか、心もとない限りですが、悩んだ末、お引き受けしました。今、弔辞を読んでいただいている橋爪功さんは、文学座付属演劇研究所の同期で旧知の間柄。1度、夫婦を演じていただいたのですが、掛け合い漫才のような言葉の応酬、50年を超える年月で培われた尊敬がにじんで心の底からうらやましかった。2人そんなやりとりが出来るような対等な関係になる願いは、かなわずじまいでしたが、橋爪さんに弔辞を代読していただくことで、少しだけ2人の間に割り込ませていただいた、錯覚をしています」

さらに樹木さんが亡くなった9月15日が、自分の実母の命日でもあったと明かした。

「樹木希林さん、15日は私の母の命日でもあります。その日に、母が出会わせてくれたあなたとの別れ。そのこじつけは正しくないかもしれない。でも母が亡くなったことを、何とか作品にしようとしたから希林さんと出会えたのは間違いない。何とかして別なものに昇華しなければいけない。それが、ほんの人生の一時を走らせていただいた者の責任。みなしごを拾い、愛情を注いでくれた、あなたへの恩返しだと思っています。希林さん、私と出会ってくれて、ありがとうございました」。【村上幸将】