介護を描いたドキュメンタリー映画「ぼけますから、よろしくお願いします。」(信友直子監督、11月3日から順次公開)の上映会が17日、東京・港区のフジテレビ本社で行われ、信友監督(56)と編集者・中瀬ゆかりさん(54)がトークショーを行った。

信友監督の両親が主人公。認知症となった母(87)と介護をする父(95)、そして2人を支える1人娘の内側を丁寧に描いた記録作品になっている。

信友監督は「最初はプライベートビデオとして撮り始めた。途中で母が認知症になり、そこで止めたら母を否定することにもなるので、違うなと思った」と振り返る。劇中には、母が「死にたい」と訴えたり、「私ばかり映さないで」と抗議をするシーンもある。中瀬さんは「ここまで撮るんだと思った。修羅の域に達している」と話した。

現在、父は上映を楽しみにしているという。「近所にビラを配って、『わしが主役なんじゃ~』と言い回っている」という。母は9月30日に脳梗塞で倒れて入院中。信友監督は「05年に初めて若年認知症を取材した時に、自分は病気を否定的にとらえていた。『なったら終わり』みたいに。でも、そうではない。誰もがいつ、家族が認知症になるのか分からない。大切な人が認知症になっても否定をするのではなく、楽しいことがある。楽しく生きていってほしい」と呼び掛けた。

夫婦の記録は最初、16年9月にフジテレビ系情報番組「Mr.サンデー」で2週にわたって特集された。その後も継続的に取材が続けられ、17年10月にBSフジで放送。映画は、この番組をもとに、追加取材と再編集を行った“完全版”になっている。