秋元康氏が総合プロデュースする劇団4ドル50セントに、秋元氏が歌詞を書き下ろした新曲が授けられた。そのうちの1曲、「ピエロになりたい」は、個人的にとてもくせになるナンバーだ。

同曲は、12月2日まで上演中の同劇団の第2回本公演「ピエロになりたい」(東京・有楽町オルタナティブシアター)の劇中歌。道化をイメージしたような独特なリズムのイントロで始まり、短調の力強いメロディーが続く。サビの「ねえピエロに ねえなりたい」という歌詞と、自分の顔を両手で隠すような振り付けは非常にキャッチー。出演している劇団員全25人でのパフォーマンスは、ピエロ風のカラフルな衣装と華やかなフェイスペイントと相まって、見るものに強烈な印象を残す。

公演名としても、曲名としても、歌詞にも使われている「ピエロになりたい」というフレーズは、秋元氏がかなりこだわって使ったようだ。関係者によると、秋元氏が自ら公演名を「ピエロになりたい」に決め、主題歌的立ち位置にも同名の曲が据えられたという。ここに、数々のアーティストの振り付けを担当するユニットCRE8BOY(クリエイトボーイ)のダンスと、演出家丸尾丸一郎氏が手がける舞台のストーリーなどが融合した。

劇団員たちも、「本当にみんなで『ピエロになりたい!』と思いながら歌い、踊っています」と話す。ストレートな歌詞は、口にすればするほど心に響くそうだ。大サビ前に照明が落ち、スポットライトが当たるダブルキャスト主演の湯川玲菜(17)または仲美海(17)を中心に、劇団員たちが時計回りにゆっくり動くパートでは、メロディーのボリュームが下がり、特に歌詞がクローズアップされる。ある劇団員は「あの場面は感情移入しすぎて、歌いながら気持ちが一時的に落ち込んでしまうメンバーも多いみたいです」と話していた。

同劇団はCDデビューなどしていないため、音源やミュージックビデオがなく、現時点ではインターネット上などでもほとんど曲を聴くことができないが、上演中の「ピエロになりたい」公演内では、もう1つの新曲「感情よ」(こちらは歌詞がじっくり染みてくるバラード)含む、オリジナル曲10曲を披露している。

「ピエロになりたい」だけでなく、「街角ミュージカル」「シャッターを上げろ」などのパフォーマンスにも、個性豊かな彩りと、観客を魅了する迫力がある。これは、男女混成の同劇団ならではだろう。まだ全体的な知名度は低く、空席が残る公演もあり発展途上ではあるが、秋元氏から授けられた新たな“武器”は、日々ステージの上で研ぎ澄まされていく。