TBSの情報バラエティー番組「爆報!THEフライデー」で1990年代の“学園祭の女王”SHIHO(51)の半生を紹介した放送で、人権を侵害されたとして、芸能プロデューサーA氏がTBSを告発した。番組でA氏は匿名ながら「400万円持ち逃げ男」と描かれ、事実無根として、3月12日にBPO(放送倫理・番組向上機構)に申し立て。これにTBS側が20万円の“謝罪金”を提示し、取り下げ工作をしていたことがわかった。

 告発者のA氏は1日発売の週刊ポストで「400万円泥棒にされた」と怒りの告発をしている。

 問題の場面は1月11日に放送された同番組内の「あの有名人が、今じゃこんなことになっている」という企画の再現映像で流れた。90年代に“学園祭の女王”として知られた歌手・SHIHOの半生が、再現ビデオで描かれ、結婚・離婚、トラブルなどを振り返るというものだった。

 A氏にあたる人物が匿名で登場したのが、SHIHOにストリップデビューを持ち掛けた場面だった。親族が白血病に侵され、その治療費を稼ぐことを決心したSHIHOの元に「お金に困っていることをかぎつけた彼」として、ストリップ公演中に出演料400万円を持ち逃げしたとされたのだ。

 A氏はこれを事実無根としたうえで、番組では匿名だったものの、当時SHIHOをプロデュースしていたことで、今も身を置く芸能界で関係者に特定され、あらぬ誤解を受けて人権を侵害されたとしている。

 A氏がTBSに抗議したり、BPOに人権侵害の申し出をしたりしたことに対し、TBSの制作部長は謝罪文を提示し「取材協力費」名目で20万円の支払いを提案してきたが、A氏は断ったという。

 このとき、TBSは別件でBPOに「放送倫理上問題がある」と指摘された直後だった。2017年12月に放送した「新・情報7days ニュースキャスター」で、俳優の細川茂樹が所属事務所を退社した際「パワハラを理由に契約解除を告げられた」と報じたが、細川が事実無根と主張し、BPOがTBS側の責任を認めていた。

 TBS関係者は「細川さんの件でBPOの指摘を受けたばかりだったので、制作責任者の権限で20万円くらいの取材費なら、すぐに出せるからでしょうけど、失礼な対応で火に油を注いでしまった。今回問題になったチーフプロデューサーは優秀ですが、人の気持ちが分からない人でしたからね」と語る。

 SHIHO側の記憶に基づく証言だけで番組を構成したことの非をTBSも書面で認めている。

「悲劇のヒロインのエピソードを引き出して構成するのはテレビ企画の常とう手段。本人の曖昧な記憶が、都合よくすり替わってしまうことはよくある。事実関係の確認などケアが甘かったのでしょう」(テレビ関係者)

 当時、SHIHOのストリップデビューを取材したメディア関係者は「A氏は親身になって彼女のことも考えてプロデュースしていましたから、だましてストリップに出すとか、ギャラを持ち逃げするなどあり得ない。彼女もノリ気で生き生きとしていました。そもそもA氏は本業の方で羽振りが良かったのでSHIHOで儲けようという感じは全くなかった」と振り返る。

 TBSの制作部長は、番組のチーフプロデューサーの降格をA氏に伝えたようだが、それもA氏を怒らせてしまった。

「相手が納得いく謝罪の形を提示できていないのに、社内の制裁人事を示すのは官僚的な思考回路。TBSは赤坂の大地主だから安泰と社内で話す管理職もいるようですが、謝罪の仕方から研修し直さないと類似のトラブルは多発しそうですね」(関係者)

 BPOが今後どんな判断をするのかが注目される。