バレエダンサー宮尾俊太郎(35)が、大阪市内で日刊スポーツの取材に答え、大阪で初公演となり、自身もプリンシパルを務めるKバレエカンパニーの公演「シンデレラ」(全3幕)をPRした。誰もが知る物語を題材に、芸術監督・熊川哲也がロマンチックな舞台を演出。ロシアの作曲家セルゲイ・プロコフィエフの音楽と、英国ロイヤル・バレエ団でも活躍したヨランダ・ソナベンドがデザインした衣装、膨大な時間と予算を使い製作された馬車などの豪華な舞台美術は、12年の初演からファンを増やし続けている。

その舞台の中心で、観る者を美しい魔法の世界へ誘うのが、世界的バレエダンサー中村祥子と宮尾俊太郎のKバレエ看板ペアと若手ダンサーたちだ。宮尾は「バレエの入り口としては最適な作品。ファンタジーときらびやかな世界でバレエのイメージが変わると思います。ハッピーエンドに向かってストーリーが進み、会場から帰る頃には、誰もが幸せな気持ちになれる。子供たちにも観てもらいたい」とプッシュする。

宮尾自身も「いま個人的にいい時期を迎えている」と話すように、心身共に充実期を迎えている。17歳で仏にバレエ留学を果たすと、帰国後の04年に熊川率いるKバレエの扉をたたき、15年から看板のプリンシパルを務めて来た。その間もテレビドラマやラジオ、CMなどに活動の幅を広げ、最近では昨年、人気ドラマ「下町ロケット」にも出演した。「それぞれバレエとは全く異なる世界なので、特にその現場で活躍される方の仕事に対する向き合い方など、間接的にとても勉強になります」と謙虚に語る。

現在もミュージカル「ロミオ&ジュリエット」に「死」役で出演するなど多忙を極める。その中でも、バレエ「シンデレラ」は熊川が「宮尾のために用意した演目」ということもあり、「特別な作品」と話す。「長い間出演していると、作品もどんどんアップグレードされていく。まるで生き物のように成長する。熊川ディレクターは100年後も愛される作品にしたいと考えているので、自分もしっかり向き合いたい」。そのために身体の動きや表現に関する学習や、食事の節制、十分な睡眠など生活全般をストイックに「プリンシパル」のためにささげる。「見ただけで、王子だと感じていただける雰囲気を出せるように普段から心掛けています」。加齢とともに身体は衰えるが、「いつまでも王子を務めることができないからこそ、今の自分を観て欲しい」。

舞台では「役として生きているか」ということを常に自問するそうだ。本番前に化粧をして衣装を着て、幕が開いたら、「役そのものを生きている」。「一旦、自分を外側から客観視して、その上でもう1度内側から役を生きる。今はそれが自然にできる領域に達したという実感と集中力があります」。実際、シンデレラ役の中村祥子も「私も俊太郎くんとなら(役として)生きられる。表現を分かりやすく出してくれるので、自然に反応できて、とても踊りやすい」と全幅の信頼を置く。

宮尾は「僕だって、たまには串揚げも食べますし、お酒もたしなみますよ。銭湯だって好きなんです」と意外な一面を吐露してはにかんだ。そんな魅力あふれる「バレエ王子」の本領を生で観たい。

公演は5月24日の東京文化会館を皮切りに6月2日のBunkamuraオーチャードホールまで東京で計7回行い、6月4日アクトシティ浜松、同6日大阪フェスティバルホールまで続く。詳細は公式サイト(http://www.k-ballet.co.jp/performances/2019cinderella.html)を参照。