【コネティカット州ハートフォード19日(日本時間20日)発】WWEのPPV大会「マネー・イン・ザ・バンク(MITB)」が開催され、女子王座戦線が大混乱に陥った。

 女子2冠王の“ザ・マン”ことベッキー・リンチ(32)は、“南部の貴婦人”レイシー・エバンス(29)を退けてロウ女子王座防衛に成功したものの、その直後にスマックダウン(SD)女子王座挑戦者の女王様シャーロット・フレアー(33)が試合順を変更して連続試合を要求。疲労の色濃いカリスマは、女王様のビッグブーツに沈んでSD女子王座を失った。

 第5試合では今大会の主役といえるベッキーが大歓声を背に登場、ここまで何度もレイシーのウィメンズ・ライト(右ストレート)で襲撃されたベッキーは、この後にシャーロットとのSD女子王座防衛戦を控えているとあって、開始から一気に出る。スライディングキックからスピンキック。場外戦でも優位に立ち短期決着を狙った。

 しかしレイシーもエプロン越しの右ストレートを放つとフェイスバスターで勝負を互角に戻す。試合中に白いハンカチで汗をぬぐう姿は、実に高貴そのものだが、その後にハンカチを王者の口に押し込む蛮行はいただけなかった。

 レイシーはその後も不知火式顔面砕きからジャンピングニーで攻勢。しかしフォールを狙ってロールアップすると、ベッキーが逆に上体を巧みに反転させて左腕を捕獲。必殺のディスアーマー(腕固め)でタップを奪った。

 難敵を退けてロウ女子王座を防衛したベッキーは、安堵の表情を浮かべて次の防衛戦に備えて休息を取るためバックステージへ向かった。するとステージにはゴージャスなコスチュームに身を包んだ女王様が、満面の笑みで登場する。ダブルヘッダーの場合は、数試合の休息をはさむのが常識だが、策士のシャーロットは「さあ、今すぐ試合をしましょう」と王者の消耗度を計算ずくで試合強行を要求した。

 カリスマが売られたケンカを買わないわけがない。昨年10月「エボリューション」のラストウーマンスタンディング戦で歴史に残る激闘を展開した2人は、開始から激しい打撃戦を展開。ベッキーは速攻勝負を狙って女王様の腕を取りディスアーマーを狙うが、体力十分のシャーロットは決定打を許さずビッグブーツを顔面に叩き込む。しかしエプロンから場外への危険なナチュラルセレクション(サマーソルト式カッター)をかわされて転落。場外カウントが数えられる間、ベッキーは何とか呼吸を整えた。

 ところが次の瞬間、まさかの展開に。前の試合で敗れたレイシーが乱入するや、場外からエプロン越しにウィメンズ・ライトをベッキーに放ったのだ。王者はダウン。その直後に女王様がビッグブーツを決めて3カウントを奪った。女王様と貴婦人の結託により、カリスマはSD女子王座を失った。

 完全にレイシーを配下に収めた感が強いシャーロットはあれこれ指示しつつ、試合後もベッキーに暴行を加える。場内は大ブーイングだ。

 衝撃は続いた。第2試合の女子MITBラダー戦で「いつでもどこでも王座に挑戦できる権利証」を獲得した庶民派の人気者・ベイリー(29)がブリーフケースを手に救出に駆けつける。そのままシャーロットに突進してコーナーポストに衝突させるや、大の字にさせてしまった。数秒悩んでいたベイリーだが、意を決した表情でブリーフケースをレフェリーに預けてキャッシュイン。そのまま大の字の女王様にダイビングエルボーを決めると、わずか16秒で新王者となってしまった。

 初のSD女子王座戴冠を果たしたベイリーは歓喜の表情で場内を1周。ベルトはSDに戻ったものの、この日生じた遺恨は根深く続きそうだ。カリスマ、庶民派、女王様、貴婦人…米国ガールズコレクションとも呼びたくなるほどバラエティーに富んできたWWE女子戦線だが、因縁渦巻く戦いの炎はさらに炎上しそうだ。