日本ハム・斎藤佑樹投手(31)が、一軍デビューの決まった吉田輝星投手(18)にエールを送った。二軍での最終テストで結果を出せなかったにもかかわらず、栗山監督の“鶴の一声”で一軍昇格が決まった話題のルーキーには、チーム内から疑問の声も上がったが…。かつて同じ経験をした「ハンカチ王子」ならではの理論で、その対処法を伝授した。

 12日の広島戦(札幌ドーム)で先発登板が決まっている吉田輝は、昇格前最後の実戦テストとなった4日のイースタン・巨人戦(ジャイアンツ球場)では3回6失点と炎上。それでも栗山監督は「来週の水曜日(12日)に先発させる。チームにどうしても先発投手が欲しかった」と明言し、その理由については「戦う姿勢は崩さなかった。体の調子を確認して、大丈夫そうだった。それだけの真っすぐになっていると荒木二軍監督も言っている」と説明した。

 それまで好調を維持していたとはいえ、課題を残した状態での昇格決定には「普通に考えたら、あの結果では一軍には上げないですよね」などと、チーム内からは疑問の声も浮上。しかし、日本ハムには似たような経験をこれまで何度もしている先輩がいる。「あいつだけ特別扱いされやがって…」など、どうしても気になってしまう周囲の空気にどう対処し、どういう気持ちでデビュー戦に臨めばいいのか。

 本紙の直撃に、斎藤の回答は明確だった。

「自分が言える立場ではないんですが…。そこは気にしなくていいと思います。栗山監督は選手によく『どの世界にも特別扱いはある』と話すんです。彼もあれだけ注目されている選手だし、何かと周囲から言われることはあると思いますが、監督やコーチなどはしっかり立場や気持ちを理解してくれているはず。後押しもしてくれますから」

 そして斎藤自身も、その「特別扱い」について「感じたことはあります」と告白。

 続けて「でも、それに対する雑音は気にしないようにしないとダメだと思うんです。(吉田輝も)前回登板はダメだったかもしれないけど、彼の長い野球人生で考えたら関係のないこと。一軍の試合で何か感じるのも必要なことだし、何よりチームの雰囲気を変えるスイッチになるかもしれないわけですから」と、終始後輩の気持ちを思いやりながら話した。

 また、その一方で斎藤は、6日に31歳の誕生日を迎えた際に、自身が普段から意識し続けていることについて、本紙にこう明かしている。

「野球とは関係ないですが、陰で誰かの悪口を言ったりとか、そういうことはしないように注意してますね。やっぱり、裏でみんなで誰かのことを叩いたりすると楽しくなることが、人間誰しもあると思うんですよ。それに流されちゃいけないな、とは心がけています」

 これまでバッシングを受けてきた斎藤なりに、思うところもあるのだろう。そしてこう続けた。

「周りの流れに乗らないことで『つまらないやつだ』と思われたりすることもありました。もちろん自分だってどうしても悪口を言ってしまう時はありますけどね。あえて気をつけていることとしたらそれくらいですかね」

 もちろん、現在は二軍調整中の斎藤自身も、吉田輝の後ろ姿を見送るだけでは終われない。

「チームのために投げられる場所があるならどこでも投げたいです。(一軍昇格に向けて)いつも通りやっていくだけです」と、再昇格に向けて力強い言葉を口にした。

【斎藤は二軍戦で好調アピール】斎藤はプロ9年目となる今季はオープン戦で結果を残して開幕一軍スタートを迎えたものの、5月11日に2度目の登録抹消となり、以降は二軍で調整中。それでも、二軍戦では8試合に登板し防御率は2.41(10日現在)と好調をアピールしている。現在は主に中継ぎを中心として投げ、6日に行われたイースタン・巨人戦(ジャイアンツ球場)でも2回を無失点に抑える好投を見せた。荒木二軍監督も「今年の春に見せた状態の良さを取り戻せれば、上からも声がかかると思う」と期待感を口にする。一軍再昇格を虎視眈々と狙っている。