【英国・ミルトンキーンズ1日(日本時間2日)発】女子ゴルフの今季メジャー最終戦「AIG全英女子オープン」初日(ウォーバーンGC=パー72)、渋野日向子(20=RSK山陽放送)が7バーディー、1ボギーの66をマーク、首位と1打差の6アンダー、2位と絶好のスタートを切った。ツアールーキーの今季、国内で2勝を挙げた黄金世代のシンデレラガールが初出場のメジャーでも輝きを放った。アマチュアの安田祐香(18=大手前大1年)は1オーバーの62位。世界ランク9位の畑岡奈紗(20=森ビル)は4オーバーの115位と出遅れた。首位はアシュリー・ブハイ(30=南アフリカ)で7アンダー。

 勢いは海を渡っても変わらなかった。前半をイーブンで折り返した渋野は10番パー4で8メートルを沈めてこの日2つ目のバーディー。ここから3連続バーディーで一気にスコアを伸ばすと、15、17、18番と終盤にもさらにバーディーを重ね、圧巻のプレーで初日を終えた。

 ホールアウト時点では首位という状況にトレードマークの笑顔で「気持ち悪いですね」。この日のプレーを「前半はパットが合わなかったけど、10番で難しいラインが入って波に乗れました。苦しい一日になるだろうと思っていたので、出来過ぎで自分でもびっくりしています」と振り返った。

 畑岡や勝みなみ(21=明治安田生命)と同い年の黄金世代だが、アマ時代に目立った実績はなく、無名といっていい存在。自身の今季初戦「ヨコハマタイヤPRGRレディス」(3月)は世界ランク577位で迎えた。

 同大会を6位と順調にシーズンを滑り出すと、5月の国内メジャー「ワールドレディス・サロンパス杯」で初優勝。さらに7月の「資生堂アネッサレディス」で2勝目を挙げ、現在は賞金ランク2位と国内ツアーの主役の一人に躍り出た。

 それでも、メジャーどころか海外のトーナメントに出場するのも初めてで世界的には相変わらず無名の存在。いきなりの快進撃は本人のびっくり以上に世界を驚かせたはずだ。

 世界ランクは5か月でグーンと上がって現在日本人4番手の46位。上位2人が日本代表となる来年の東京五輪出場も現実味を帯びてきた。

 ただし、渋野が東京五輪と聞いて真っ先に思い浮かべるのはゴルフではない。「私、ゴルフしている場合じゃないんですよ」と大好きなソフトボールの観戦で頭はいっぱい。シーズン中であることから周囲に止められ、五輪チケットの第1回抽選に申し込まなかったことを本気で後悔している。

 今大会でキャディーを務めている青木翔コーチ(36)は渋野に全英女子出場の可能性が出てきた段階で、今季何度かコンビを組んでいるあるプロキャディーに声を掛けていた。

 しかし、返事は「パスポート持ってないんですけど…」。その結果が昨季唯一のレギュラーツアーに出場だった「アースモンダミン杯」(予選落ち)以来2度目の師弟コンビでの参戦。周囲も今季の海外メジャーに出ることを全く想定していなかったことがうかがえる。

 ラウンド中は日本にいる時と変わらず、駄菓子を口にするなど、どこに行ってもマイペースの渋野は「初日のことは忘れて、しっかり自分のゴルフをしたいです」。2日目以降、さらに世界を驚かせる。