巨人OB・松井秀喜氏(45=ヤンキースGM特別アドバイザー)が29日、東京ドームで行われた巨人―広島戦のゲスト解説を務めた。放送ブースでは前巨人監督・高橋由伸氏(44)とともに、古巣の戦いぶりを見守ったが、待望されるゴジラの“Gカムバック”は本当にあるのだろうか。あの人のパターンもささやかれる中、松井氏の巨人時代から番記者を務めた本紙記者が、復帰のタイミングをずばり指摘した。

 この日の巨人―広島戦で、松井氏は由伸氏と初めてダブル解説を務めた。試合は巨人打線が早い回から爆発し、一方的な展開に。球場を引き揚げる際に松井氏は「素晴らしい試合でしたよ、もちろん。ジャイアンツにとってはね」と満足げにコメントすると、マジックを着実に減らしている現状については「打線が爆発して理想的な展開だったと思うけど、今日1試合だけじゃわからない」としながらも「この時期にこれだけ2位に5ゲーム差ぐらいあるわけでしょう。圧倒的有利なわけですから。素晴らしい戦いをしてきたんだと思いますけど」と続け、5年ぶりとなるリーグV奪回へ太鼓判を押した。

 それにしても…だ。巨人のレジェンドOB・松井氏は今後、古巣とどのように絡んでいくのだろうか。巨人サイドから“恒例行事”のように聞こえてくるのが、将来的な監督就任だ。実際に古参の球団関係者を中心に「帰って来てくれれば…」と願う声は少なくない。ただし現状で松井氏周辺の情報を総合すると、近い将来の巨人監督就任の可能性は「極めて低い」と言わざるを得ない。

 現在の松井氏は米国・ニューヨークを生活拠点にしている。私生活では2008年に一般女性と結婚。子供たちと、誰にも邪魔されることのない米国流「スローライフ」を満喫している。現役時代に多忙な生活を送り続けてきた松井氏は今、家族と共有する時間を何よりも大切にしており、現状の生活を理想としている。

 今後の大きなカギを握るのは、やはりもうひとつの古巣・ヤンキースだ。現役引退後も「GM特別アドバイザー」として契約中で、球団行事への参加やマイナーチームでの指導など定期的な職務をこなしている。この役職はニューヨークを拠点にしながら今のスローライフも維持できるので松井氏にとってもメリットは大きい。

「松井氏の子供たちが成長して“親離れ”する時が監督として巨人に復帰するタイミングになるかもしれない」と口にする関係者もいる。しかし、それも一筋縄ではいかない。なぜなら、そこでもヤンキースが“巨大な壁”となりそうだからだ。

 実はヤンキースはこれまで複数回、松井氏に打撃コーチ就任のオファーを出しており、松井氏はその都度、断っているという。理由はチームに帯同するとなれば、家族との時間を維持できなくなるから…。そんな情報を耳にするたび、日本での復帰は難しいと思ってしまう。ユニホームを着るとしても、まずは米国で。「日本人初のメジャー打撃コーチ」が先に実現するのではないか。

 ちなみに一昨年1月に生まれた2番目の子が成人するとき、松井氏は63歳だ。復帰が待望されながら、いまだユニホームを着ていない江川卓氏は現在64歳…。

 18年後の巨人監督就任は夢物語で片付けられそうだが、そうとも言えない。原監督は3年契約で、その後はチームの顔・阿部慎之助(40)が控える。由伸氏の再登板もありそうで、この日の中継でも意欲をにじませていた。そこがある程度の長期政権になれば、18年後は良いタイミングかもしれない。もっともファンは“そんなに待てない”“早く戻って来て”が本音だろう。1年でも早く見たいのはやまやまだが、2037年まで待つことになりそうか。

【江川氏の例で分かる「タイミング」の難しさ】巨人生え抜きの有力選手で現役引退後、指導者として一度もユニホームを着ていない代表格といえば、江川卓氏(64)だろう。

 巨人のエースとして実働9年、1981年のシーズンでは20勝をマークするなど通算135勝を挙げながら87年、右肩痛を理由に32歳の若さで現役を引退。以降は指導者としての復帰が待望されながら、実現しないまま32年、今に至っている。

 その理由としては当初「大の飛行機嫌いのため、遠征先への移動が難しい」「監督なら受けるがコーチはダメ」などがささやかれたが、不動産、投資関連などでの借金額が大きく、読売側がオファーに難色を示した部分もあったという。

 それでも絶大なネームバリューと、テレビ解説などで見せる親しみやすい語り口などから、日本テレビが入閣を猛プッシュ。たびたび監督候補に挙がり、星野仙一氏の巨人監督就任話が急浮上した2005年には、監督はもちろんのこと「ヘッドコーチとしてだったら、その風景を見てみたいという気持ちがある」と本紙のインタビューで答えている。

 また、11年には原監督の発案でヘッドコーチへの就任が内定していたというが、これに当時の清武球団代表が強く反発(いわゆる「清武の乱」)し、結局はお流れに。当時、江川氏はヘッドコーチ就任について「正式な話は受けていません」と当惑していた。

 いくら本人がその気になっても、タイミングが合わなければ流れてしまうのが監督というもの。松井氏の事情と巨人の事情が一致する日は果たして来るのか。