柚希礼音(40)主演のミュージカル「FACTORY GIRLS~私が描く物語」(10月9日まで)が東京・赤坂ACTシアターで上演中だ。19世紀半ばの米国の紡績工場を舞台に、働く女性の権利を求めて立ち上がった女性たちの姿を描いている。

日米合作で、世界初演の舞台だが、その制作の過程が面白い。もともとブロードウェーの大物プロデューサーのホームページに、自分はプロデュースしないけれど、年間を通して集めた優秀な作品のトップ10が掲載されていて、その中の1つに今回の舞台のスタッフが注目・発掘して、上演に至ったという、非常にまれなケースだ。

元になる作品を書いたのは、クレイトン・アイロンズとショーン・マホニーという若手コンビで、ニューヨーク大芸術学部のミュージカルシアターライティングプログラムの学位プロジェクトとして始めた作品だった。ただ、開発途中の未完成だったため、そのままでは上演が難しいと、今回の演出を手掛けた板垣恭一氏が上演台本を書き上げ、音楽監督の大崎聖二氏がミュージカルの曲として手を加えたという。

本番前、柚希は「世界初演、日米合作という大きな作品で、みんなが一丸となって作り上げた自信作です」と話したが、言葉通り、なかなか見応えのある力作だった。柚希演じるサラをはじめ登場人物たちのキャラクターが鮮明で、見る者の心を揺さぶる楽曲もあった。初日の客席には、米国から来日したクレイトン・アイロンズとショーン・マホニーの姿があり、カーテンコールのスタンディングオベーションで、真っ先に立ち上がったのは彼ら2人だった。世界初演の真っさらな作品は、幸先のいいスタートを切った。【林尚之】