昭和生まれのアラフォー~アラ還が懐かしむ日本の歌手や楽曲を、平成生まれ世代や外国生まれのミュージシャンはどう聴くのか? マーティ・フリードマンと風男塾の紅竜真咲、桜司爽太郎が日本の懐メロの魅力を分析します。今回のテーマは太田裕美のあの大ヒット曲。ヒットした理由と、マーティが共通点を見つけたキッスの名曲とは? 曲を聴きながら読んでみてください。

【太田裕美論】

 ――今回のテーマは桜司さんが大好きな太田裕美の「木綿のハンカチーフ」。1975年発売。作詞・松本隆、作曲・筒美京平という昭和歌謡の黄金コンビによる作品です

 桜司:太田さんの声、透明感があってめちゃ好きなんです。伸びもすごい! マーティさんはこの声をどう思いますか?

 マーティ:日本的な癒やし系の声ですね。こんな人に癒やされたいです。

 桜司:かわいい声で幸せな気持ちになりますよね。

 マーティ:すごくかわいい声ですが、アイドルのかわいさじゃなく、すてきな声のお母さんという感じです。おいしいクッキーを焼いてくれそう(笑い)。お母さんに癒やされてる感じです。

 桜司:包み込んでくれる優しい声ってことですね。

 紅竜:声に母性があるんですね。

 桜司:歌詞もいいんですよ。男の人は都会に行って染まろうとしている。女の人は地元で待っている。その2人の手紙のやりとりみたいな構成になってます。ぜひ、歌詞をしっかり聴いてほしいです。誰でも共感できるところがあると思います。自分はこの女の子はけなげでかわいくて、守りたくなるタイプだと思ってます。

 マーティ:独特な歌詞ですね。この曲は歌詞で売れたんじゃないですか。というのは、サビで盛り上がるとかないじゃん。すぐ覚えられるメロディーでもなくて、人に「どんな曲?」って聞かれると、メロディーを説明するのが難しいです。今も愛している人がいるのは、歌詞の力ですね。素晴らしい!

 紅竜:確かに、どんなメロディーか説明するのが難しいですね。

 ――75年=昭和50年という時代を反映した歌詞です。昭和30年ごろから、就職、進学で地方から東京などの都会に移り住む人が多かったので、このころは共感する人がより多かったでしょう

 紅竜:「なごり雪」もそうだし、当時はこういう歌が多かったんですね。

 ――「なごり雪」はかぐや姫のオリジナル版が74年発表。75年にイルカ版が発売され大ヒットしました。こういう遠く離れた男女の切ない歌って米国にもありますか

 マーティ:この時代で言うと69年にヒットしたジョン・デンバーの「リービング・オン・ア・ジェット・プレーン」がそうです。「恋人から遠く離れた場所に行かなきゃいけない。次はいつ会えるかわからない。本当は行きたくないんだ」という歌詞です。このコンセプトはどこの国にもありますね。

 紅竜:都会に染まるとか、都会で汚れるという感覚はあるんですか? 日本の歌にはよく出てきます。

 マーティ:あるね。都会はいろんな誘惑があるじゃん。都会に行った人のことを田舎の人が嫉妬したり、都会から田舎に戻ったら「あいつは成功しなかったから戻ってきやがった」みたいなのもあります。

 紅竜:そういうのは変わらないんですね。

 桜司:マーティさん自身はこういう歌詞をどう思いますか?

 マーティ:僕も若い時に遠距離恋愛の彼女がいたし、今もツアーで奥さんと離れてる時間多いじゃん。その独特の寂しい気持ちはすごくわかります。こういうコンセプト、意外にロックバンドの曲に多いんですよ。定番はKISS(キッス)の「ベス」(76年)です。「バンドのリハで曲がうまくできないから今は帰れない。でももうちょっとで帰るよ。いややっぱり帰れない」という歌詞です。バンドマンはみんな共感してます(笑い)。

☆ふだんじゅく=男装ユニット。「人を元気にする」という活動理念のもと、歌やパフォーマンスを行うほか、男性ファッション誌のモデルも務めている。11月6日にニューシングル発売予定。

☆マーティ・フリードマン=米・ワシントンDC出身のギタリスト。1990年から2000年までメガデスに在籍。04年から拠点を日本に移し幅広いジャンルで活躍。11月26日、モーションブルー横浜で「秋!横浜の宴」ライブを開催。