NHK連続テレビ小説「ひよっこ」やTBS日曜劇場「この世界の片隅に」をはじめ、映画「おいしい家族」などで活躍する女優・松本穂香(22)の主演映画「わたしは光をにぎっている」が15日から全国公開される。

 メガホンを取ったのは、モスクワ国際映画祭で2賞を受賞した「四月の永い夢」の中川龍太郎監督。都市開発を間近に控えた東京下町商店街の銭湯を舞台に、田舎から上京した宮川澪(松本)が、人や時間、場所が失われていくという経験の中で、自分の居場所を見つけていくという物語だ。

 この作品を「現代の魔女の宅急便」と称する中川監督は、製作の動機についてこう語る。

「自分に映画を教えてくれた親友が自殺してしまったんですけど、その親友と学生時代に行っていた銭湯や居酒屋が都市開発でなくなった。自分と親友が過ごしていた時間ごと消されてしまったような気がしたんです。自分の生まれた街も奇麗で清潔だけど無個性な住宅街になってしまった。そんな連続性がなくなることへの恐れと悲しさ、少しの怒りがきっかけとなりました」

 言葉は極端に少ないが芯のある主人公・澪には最初から松本を想定していたという。

 その松本は「とにかくすてきな言葉がたくさんある台本だと思いました。私のことはこう見えているんだな、わかってくれていての“この本”だと。澪が自分に近い分、悩む必要がなかったので演じるのは難しくなかったですね」と語る。

 消えゆく商店街の話なのに温かい物語になったのは、浄化にも近い透明感を持つ松本をはじめとする出演者の魅力ゆえだろう。

 お気に入りの場面は「三沢さん(光石研)が小便しているじゃないですか。そのとき音を聞きながら見ている澪(松本)の表情がたまらない。二度見するのかな。もう最高なんです」。監督の少々マニアックな場面に対し、松本は「最後が一番好きかもしれないです。引いて撮っている。大体9割の人は寄りで終わると思うんですけど、監督はいらないっておっしゃって。その映像に未来を感じたんです。終わり感がない。映画の終わりという感じがしない」。

 銭湯が消えても澪の人生は続く。ちなみに銭湯後のドリンクについて松本は「コーヒー牛乳」、中川監督は「フルーツ牛乳」派だそうだ。