まさかの大革命だ。ノア16日の東京・後楽園ホール大会で、闇王・齋藤彰俊(闇社会のため年齢非公表)率いるダークエージェント(DA=構成員は井上雅央のみ)が、何と「反選手会同盟」の結成を宣言した。

 第2試合でモハメドヨネ、クワイエット・ストーム組を一蹴した齋藤は試合後、サイレンを鳴らして報道陣に招集をかけた。「お前らに今日ここでハッキリ言いたいことがある。現在ノアには杉浦軍、金剛と軍団が乱立している。しかるにどの組織もまとまっていないのが現状である。ノアに今一番必要なのは熱い刺激であーる!」と、闇王は久々に得意のアジテーション演説を始めた。

 頭脳警察の伝説的1stアルバム冒頭を飾った「世界革命戦争宣言」(1972年)のようなアジ演説は延々と続いた。「俺自身の歴史をひもといてみてもその昔、某メジャー団体に少人数で殴り込んでいった実績がある。今の時代に欠けているのは反骨精神である。ここに我々は反選手会同盟の設立を宣言する!」

 何と1990年に新日本プロレスを沸かせ、その後に平成維震軍として一大勢力となった侍・越中詩郎(61)率いる伝説のユニットを再現するというのだ。

 闇王の口調は一気に熱気を帯びていく。「2020年、東京五輪の年に向けて、今こそ改革の時がやってきた。反選手会同盟やってやるって! 全部ブチ壊してやるって! なあ雅央!」と叫ぶや、相棒の胸板にチョップを打ち込むほど闇王の興奮はピークに達した。

 もっとも49歳の悲しき中年はフリーで、リスクは契約選手の齋藤のみが背負う。そもそもノアの選手会は過去にクリスマス興行を開催するなど、平和かつ会社に協力的な組織であり、反抗する理由はどこにも見当たらない。興奮し切った齋藤は途中で入ってきた報道陣に「ドアを閉めんか!」と、往年の反選手会同盟主力メンバー・小林邦昭(63)のような怒声を発した。

 さらに「現状に不満を持っている人間、行き場のない怒りを胸に抱いている人間…すべて反選手会同盟が受け入れる。志ある者はこの旗の下に集え!」と絶叫したが、反選手会同盟や平成維震軍の象徴であった軍団旗は、もちろんまだ完成していない。「フフフ…焦る必要はない。同じ志を持つ者が現れれば、旗など自然と生まれてくるものだ」と、闇王は何だかよく分からない理由で強引に着地させた。

 さらには、15日のデストロイヤー追悼興行(大田区総合体育館)の第2回デストロイヤー杯争奪バトルロイヤルを雅央が制した事実を再確認すると「雅央の快挙が我々の出発の号砲となる。もうこれ以上、我々を押さえつけることは不可能である。さあ、井上さん。昨日の栄冠の賞品である偉大なデストロイヤーさんのマスクを着けてください!」と相棒に奮起を促した。

 しかし井上の頭部がデカ過ぎて入らず、まるで中途半端な下着ドロのようなみっともない姿に終わる始末…。周囲からは「奥さんにガードルを縫い直して覆面を作ってもらえば」「そのままスキンヘッドにして魔王のタトゥーを入れればいい」などの声も上がったが、当の井上は頭からマスクが外れず「イタタ…」と悲鳴を上げるのみだった。

 その光景を見つつ闇王は「フフフ…。最近、あちこちで小銭を稼いでいるから、子ブタの小銭貯金箱が特大の500円玉貯金箱になったことも俺の情報網で判明しているぞ。雅央のポケットマネーで軍団旗を作ってもらうのもいいな…」と相棒を放り出したまま、水道橋の深い闇へと消えた。

 新しい風景を追求し続ける新生ノアに、かなり厄介な軍団が誕生してしまった。