TBS国山ハセンアナウンサー(28)。この秋スタートしたTBS朝の情報番組「グッとラック!」(月~金曜午前8時)で、落語家立川志らく(56)とともにメインMCを担当している。優等生タイプに見えて「僕は野心家」と言い切るアツい人。「5年後、この番組は1位になっていると思う」。闘志あふれる言葉の数々から、骨太なキャラクターが伝わってきた。

★入社7年目抜てき

入社7年目で、目標だった「情報番組のメインMC」に抜てきされた。志らくとのコンビで鳴り物入りでスタートし「ここでちゃんと結果を出さないと」と自覚している。第1回放送の9月30日は、周囲からの期待の品々を全身に身につけて臨んだ。

「これまで担当していた番組から卒業プレゼントとしていただいたものを全部。下着、タイピン、ネクタイとか。人の思いがパワーになって、これが今の俺の最終形だ! みたいな。気負いすぎるなと言われますが、何事も熱量をもってやりたいんです。MCとしてすべてが初めてで疲れましたが、忘れられない1日になりました」。

日韓関係などホットなテーマで特集も組み、番組への愛着が一気に湧いた1日でもあった。「この番組いいじゃん、と素直に思えたんです。スタートから約1カ月半。まだ軌道に乗る途上ではありますが、チームとしてちゃんと試行錯誤できている。未完成なものがここから良くなっていく感じが楽しいです」。

裏は日本テレビ「スッキリ」、テレビ朝日「モーニングショー」、フジテレビ「とくダネ!」という強力ラインアップ。「みんな有名な番組で視聴率もいいですが、どんな番組も危機的状況というのは体験してきたはず。なので、今は裏環境をあまり考えず、僕たちはこういう番組なんだと固めてやり続けることだと思います」。実は、番組プロデューサーにハセンを推薦したのは「スッキリ」のMC、加藤浩次。かつて「スーパーサッカー」で共演したハセンを高く評価していた。「ドラマを感じます。いろいろ教わってきて、すごい影響を受けた人なので、全力でぶつかりたいです」。

志らくはどんな人かと聞くと「博識で、本当に優しくて怒らない人。なのに、ツイッターの攻撃にわざと言い返して対決したりしておもしろい」。アナウンサーとして、ともにMCを組むことにも意義を感じている。「これまでの経験や、報道、スポーツ、バラエティーなど社内のあらゆる部署と情報共有できるのは局アナならではの強み。世の中に、TBSアナウンサーの力を見せたいという思いはあります、とても」。

★意識高い系が好き

行儀のいい優等生のように見えるが、話してみるとかなりアツい。「よく言われます」と笑い「僕は野心家です。目標や、こうなりたいという気持ちは、ちゃんと言葉で表現する」と明快だ。ゆえに、偉人のサクセスストーリーや座右の銘、自己啓発本など、生き方や闘志に火を付けてくれる言葉のマニアでもある。

「世界を変える、みたいな、意識高い系が好きなんです(笑い)。最初に刺激を受けた言葉は、10代の時に聞いたロベルト・バッジオの『選択肢が二つあるなら難しい方を選ぶ』。痛々しいんですけどガラケーの待ち受けにしてました。スティーブ・ジョブズの『ステイ・ハングリー、ステイ・フーリッシュ』とか。初めて買った自己啓発本は、高3の時の『無駄に生きるな熱く死ね』。ずっと覚えています」。

★自作の名言もある

なんと自作の名言もある。思いついた時にメモしている。「ご紹介しましょうか?」とニヤリと笑い、スマホのメモ帳をスクロール。選んでくれたのは「足し算ではなく引き算もある」。「これはアナウンサー論でもあるんです。前のめりに情報を出そうとか、前に出ようとか考えがちなんですけど、引きの美学を僕は提唱しているんです。引いて黙っていても、伝わるものはあると」。

アナウンサーになったのは、両親の影響だ。「父親のルーツがイラクということもあり、国際情勢などは人より考えてきたという感覚が幼い時からある」。大学の商学部では、そんな思いとビジネスと掛け合わせた「企業の社会貢献」について勉強したが、勉強するほど「やはりメディアの力は大きい」と実感するようになった。「母がアナウンサー志望だったせいか、僕はテレビっ子。人前に出るのも好きだし、人に何かを伝えられるアナウンサーという職業が自分には向いているのではないかと」。

情報バラエティーのジャンルを選んだのは、野心家のこの人らしい。「桝太一さんや、羽鳥慎一さん、先輩の安住紳一郎さんなど、局の顔になっている人たちって情報バラエティーの人が多い。僕も『好きなアナウンサーランキング』1位を目指しているので」。

★自分はB+な人間

野心を前面に出すのは、「自分はB+(プラス)な人間」という自覚があるためだ。「学級委員でもなかったし、頑張っていたサッカーもプレーはそんなに上手ではなかった。声を出して周りを盛り上げる方。エースで四番のタイプではないので、『こうなりたい』と表現した方が『いいね君』ってなる。ハングリー精神です」。実際、このやり方で「20代でメインMC」の夢をかなえた。

「B+」の器用さゆえに悩んだこともあったようだ。加藤浩次や「アッコにおまかせ!」の和田アキ子など、強烈なインパクトを持つ人の横で巧みな持ち味を発揮し、井上貴博アナがキャスターを務める「Nスタ」ではサブキャスターとして存在感も示してきたが、「いつまで僕はサブやプレゼンターの立ち位置なんだろうと。不安に駆られて、1年半くらい前には辞めようと思ったこともありました」。そんな中での「グッとラック!」のMC起用。「ムードメーカーとしてチームを引っ張る、僕なりのやり方でリーダーシップを発揮したいです」。

10年後の自分をイメージできるか聞くと「できます」と即答した。

「5年、7年、10年で考えているので。5年後は『グッとラック!』が1位になって、一番いい状況です。7年後は35歳。好きなアナウンサーランキングできっと1位です。10年後は殿堂入りして一番有名なアナウンサーになっています」。笑っているが、目は本気。「そう思って仕事しないと、人生かけてテレビに携わり、表現している人たちに失礼なので」。野心家で愛されキャラ。その意味が分かる気がする。【梅田恵子】

▼「Nスタ」キャスター、井上貴博アナウンサー(35)

若い人はアグレッシブに挑戦して上の人間を食っていくべきだと思うので、彼の野心的な部分は率直にいいなあと思います。「それをオンエアでも」と言っているんですけどね。オンエアがきれいになってしまっているので。たたかれようと、20代にできる失敗は宝。失敗できていないということは攻めていない証拠。お互いたくさん失敗しましょう。あと、大事なのは何をするかなので、好きなアナウンサー1位を目標にするのはそろそろやめた方がいい(笑い)。まあ、それも含めてかわいい後輩です。

◆国山ハセン(くにやま・はせん)

1991年(平3)1月25日、東京都生まれ。イラク人の父と、日本人の母を持つ。中大商学部卒。約2000人の応募からアナウンサー採用試験に合格し、13年TBS入社。「スーパーサッカー」「アッコにおまかせ!」「Nスタ」などを担当。秋から情報バラエティー新番組「グッとラック!」メインMC。趣味はサーフィン、筋トレ。ハセンはアラビア語で「美しい」の意味。

◆TBS「グッとラック!」

月~木曜午前8時~同10時25分、金曜午前8時~同9時55分。MCは落語家立川志らくと、国山ハセンアナ。アシスタントは入社1年目の若林有子アナ(23)。

(2019年11月24日本紙掲載)