「ドラゴン桜」などで知られる三田紀房氏の人気漫画で、今年夏に菅田将暉主演、山崎貴監督で映画化されて大ヒットした「アルキメデスの大戦」が今度は舞台化される。6月の東京・日比谷シアタークリエで、主演は舞台「刀剣乱舞」シリーズなどで活躍する鈴木拡樹に決まっているが、脚本家と演出家の名前を聞いて、ちょっと驚いた。

劇団チョコレートケーキの古川健が脚本、日沢雄介が演出を担当する。劇団チョコレートというと、歴史フィクションなど硬派の舞台で人気はあるが、東宝系の劇場で2人による舞台が見られるとは思っていなかったからだ。

大正天皇の苦悩を描いた「治天ノ君」で読売演劇大賞選考委員特別賞を受賞したほか、あさま山荘事件の内側を描いた「起て、飢えたる者よ」、政権を手にするまでのヒトラーとナチス幹部の歩みを描く「熱狂」、ナチスのユダヤ人大量虐殺を生き延びた男を主人公にした「あの記憶の記録」、日本の朝鮮統治時代を舞台にした「追憶のアリラン」など、骨太の作品が多い。

ちょっと驚いた後で、東宝も「攻めているな」とも思った。かつて東宝系の劇場では人気女優が主演する「女優芝居」が全盛だった時期があったが、今はミュージカルが取って代わった。その中で、シアタークリエでは今年からケラリーノ・サンドロビッチ作品をケラ以外の演出家による舞台を始めるなど、ミュージカルではない舞台制作にも力を入れようとしている。そういう意味で、舞台「アルキメデスの大戦」は、東宝演劇の方向性を占う試金石ともなりそうだ。