関西人に愛された名所がまた一つが消える…。JR大阪駅近くの桜橋交差点にあるボウリング場「桜橋ボウル」が、入居する「桜橋吉豊ビルディング」の老朽化に伴う解体新築工事のため、12日に営業を終了する。47年の長きにわたって愛されてきたボウリング場との最後の別れを惜しみ、多くのファンが駆けつけている。

 桜橋ボウルは、日本中がボウリングブームに沸いていた1972年12月にオープン。桜橋吉豊ビルディングの5~7階に20レーンずつ、計60レーンを備える。JR大阪駅や各線梅田駅、大歓楽街の北新地にも近いという抜群の立地の良さや、ビルに入る「パブ・レストラン バンダリア」(昨年末に閉店)とのセットで会食を楽しめることもあって、一般客や会員、企業の懇親会など多くの関西人に愛されてきた。

 だが周辺のビル同様、47年の歴史で建物は老朽化。昨年7月に商業ビルへの建て替えと、12日での営業終了が発表された。新ビルにボウリング施設は入らないという。

 同センターの岡林隆一支配人は「昔、ボウリングをしに来ていただいた多くの方が『最後って聞いたから久々に来たわ。残念やわ』と言ってくださってます」と、多くのファンが最後の別れを惜しみに来ていると話す。

 仕事始めの6日も全レーンが埋まり、順番待ちする客の姿が見られた。

 50歳の岡林氏は27歳の時から勤務し、多くの有名人も遊びに来ていたと振り返る。

「元阪神の湯舟(敏郎)さんやDJのヒロ寺平さんは、よく来ていただいてました。最近でも、関ジャニさんやAKBのメンバーさんも来てくれましたね。海外でもボン・ジョヴィのギタリストの方とか。あと、グリーン・デイが大阪に来た時に、うちのビルの壁に描いている『Bowling Bowling Bowling Parking Parking』というのを見て、アルバムのタイトルに付けたんですよ」

 老朽化や維持費の高騰化、より収益性の見込める施設への転換など理由は様々だが、ボウリング場の数は全盛期の3000から現在では700を切るほどになっている。

 大阪の中心部でも2018年末に新大阪の「イーグルボウル」、今回の「桜橋ボウル」、さらに3月には「弁天町グランドボウル」も閉めるという。

 ただ、全盛期に比べ減っているとはいえ、ミュージシャンの桑田佳祐が旗振り役となって昨年誕生した「KUWATA CUP」などの影響もあり、競技人口は増加傾向にある。

 岡林氏も「桑田さんの力もあって、全国的にボウリングセンターの収益は右肩上がりなんです。ウチもずっと前年比10%(増)の売り上げがあったので、老朽化が理由っていうのは僕たちも歯がゆいところはあります」と無念さをにじませる。

 毎日、60あるレーン全てのオイルをきれいに取り除いてから新しいオイルを流し込む作業や、一個一個のボールの穴を丁寧に掃除するなど「目に見えないところのメンテナンスはきっちりやってきたつもりです」と胸を張るだけに、その思いはなおさらだ。

 同センターでは最終日の午後4時から「さよならボウリング大会」を行う。

 岡林氏は「どこのボウリング場も閉めるときは『最後に楽しんでいってください』とやるので、何もかも忘れてお客さんに楽しんでいただけたら。僕も27歳の時からこちらで働かせてもらって、親から教わらんことも教わった。ありがとうの言葉しかないですね。残り1週間を切って、ちょっと寂しい思いも出てきました。泣いてくれるお客さんもいてくれるんですけど、僕が泣きたいですよ」と笑った。

 多くの思い出がつまったボウリング場は間もなく、その役割を終える。