年を重ねるごとに、衰えを感じてしまうのが下半身だ。さまざまなアプリを試しているものの、やはり20代のようにはいかない。そんなことを考えていると、ふと、虎ノ門・日比谷クリニックの山中秀男院長のことを思い出した。

 1927年生まれの山中院長は、東京医大を卒業後、日本インポテンス学会の草分けで、元慶応義塾大学の金子永寿博士に師事した泌尿器科の専門家だ。男女の下半身問題を歯切れよくアドバイスすることから、さまざまなメディアに登場。本紙男セン面でも連載を持ち、読者には大変好評であった。

 筆者も、男セン記者時代、何度も取材をしたことがある。そのかっぷくのよい体格と温かい眼差しに、人を安心させる雰囲気があったのが印象深かった。

 初めて取材した時は、性病について聞いたのだが「それはね、土橋君!」と始まるや、筆者のノート1ページを丸々使って、巨大な男性器を描いて説明するのだった。それで終わりかと思ったら、次から次へ1ページ丸々1個だけの男性器を描いていく。面食らう筆者などお構いなし。泌尿器科の権威は、およそ10ページを使って、10個の、実にリアルな男性器を描いてみせた。その後、街頭淫タビューの取材中、そのノートを女の子に見られて、ドン引きされたことがあったが、山中院長のコメントは丁寧で、抜群に面白かったのを今でも覚えている。

 それから数年後のこと。筆者は異動し、ボクシング担当を務めていた。当時は、亀田三兄弟が何かと物議を醸し、注目を集めていたが、二男の大毅氏は、内藤大助氏を試合中に投げ飛ばした影響でバッシングの雨あられ。しばらく謹慎を経て復帰したものの、イマイチ精彩を欠いていた。

 そんなある日、筆者は三男の和毅と雑談中、ひょんなことから話が下ネタに及んだ。ついでだったので「三兄弟のうち、一番スケベなのは誰?」と聞いたところ、和毅は「大ちゃんやで!」と即答。「なんで?」と畳みかければ「部屋に一番AVがあるんやで!」という。「ほう、これは面白い」と思った。

 そこで即、山中院長に取材したところ、次のようにコメントしてくれたのだ。

「それは状態が良い証拠ですね。性欲が旺盛ということは、男性ホルモンのテストステロンが豊富に分泌されているということ。テストステロンは闘争本能と密接な関係があるので、格闘技選手にとっては、スケベであることは良いしるしにほかなりません」

 次の日、本紙記事では「大毅は三兄弟で一番スケベ 次戦は大丈夫」などという見出しが躍った。泌尿器科の権威が太鼓判を押してくれたのだから、これほど心強いことはない。筆者としてはエールのつもりだった。以来、大毅氏は口を聞いてくれなくなったが…(笑い)。

 80歳を超えても、毎日腕立て、腹筋、スクワットを欠かさず、ビルのクリニックのある5階まで階段を使うという山中院長。同院長の著書「男性力がもっとみなぎる本」を改めて読み直してみたいと思う。

(文化部デスク・土橋裕樹)