日本テニス界エースの“真意”とは――。右ヒジ故障で昨年8月の全米オープンからツアーを欠場していた錦織圭(30=日清食品)が、国別対抗戦「デビス杯」予選エクアドル戦(6日開幕、兵庫・ブルボンビーンズドーム)で控えに回り、出場を見送った。体調面の問題と説明し、約7か月ぶりの復帰も先延ばしとなったが“40歳現役”を実現するための戦略でもあるという。

 まさか復帰がここまでズレ込むとは…。昨年10月に右ヒジの骨棘(こっきょく)を取り除く手術を受け、1月の全豪オープンを目指してリハビリしてきたが、復帰時期は大きく遅れた。今大会で約7か月ぶりのプレーが見られるかと期待は高まったが、フタを開けてみればエントリー漏れだ。

 錦織は右ヒジについて「だいぶ治ってきて痛みもない」と言いつつ「体調面がまだマックス(最大)ではない」と回避。復帰についても「マイアミ(オープン、24日開幕)になるかもしれないし、クレーシーズン(4月以降)になるかもしれない」とメドは立っていない。今夏には東京五輪が控えるだけに不安は募るばかりだ。

 そんな周囲の心配をよそに、錦織はすがすがしい表情で高田充ヘッドコーチ(50)とともにサーブのフォームをチェック。同コーチがタブレットで撮影した動画をスローで確認する作業を繰り返した。引き揚げる高田コーチを直撃すると「ヒジや手首の負担を減らすためにサーブのフォームを変えているんです」。

 2年前に右手首を故障した際も改良に取り組んだが、今回は本格的な変更という。「とにかくケガをなくすのが第一。サーブのフィニッシュで手首をあまりに使い過ぎ、スナップさせる負担がかかる。打ち終わった後に手首が折れ曲がっていないか、真っすぐかを動画で確認していました」

 並行して体の使い方も研究。インパクトの瞬間に効率よく力が入る関節の角度を追求する。「例えば(メジャーリーグ・カブスの)ダルビッシュ(有)投手(33)もフォームを変えましたが、テニスも野球と一緒で若い時と同じだとケガをしやすい」と同コーチ。数年前から話し合いを重ねて長年染みついたフォームと決別。強い覚悟で改良に踏み切ったという。

 そんな錦織は“40歳現役”を見据えているという。同コーチは「ケガさえなければ東京五輪どころか、次の次の五輪くらいまで見えてくると思いますよ」。だからこそ慎重に復帰時期を探っているわけだ。復帰遅れによる周囲の不安など、どこ吹く風。錦織は「先の先」を見つめている。