「第27回読売演劇大賞」の贈呈式が2月28日に都内のホテルで行われた。例年は贈呈式後に立食の懇親パーティーがあるが、今年は新型コロナウイルス感染拡大を受けて飲食はなく、出席者はマスク着用を義務付けられた。

しかし、受賞者の喜びは例年と変わりはなかった。「Q」で最優秀作品賞を受賞した野田秀樹(64)は、米国公演中のため欠席し、ビデオメッセージを寄せた。そこで「Le Pere父」で大賞・最優秀男優賞の橋爪功(78)に触れて「東京芸術劇場の芸術監督として『Le Pere父』の台本を読んだ時、『これ、橋爪さんに絶対いいな』と思ってお願いしたのですが。もしあの時そう思っていなければ、『Q』が大賞をとったのかなって」と話し、会場の笑いを誘った。

最後に登壇した橋爪は「年がいもなく、誇らしいような、ドキドキした気持ちでいっぱいです」と喜びを語りながらも、野田については「野田がこの作品を紹介してくれましたが、今、ニューヨークにいます。でも、この賞のために(『Le Pere父』の演出家)ラディスラス・ショラーはフランスからわざわざやってきています。彼に最優秀作品賞をあげたいのですが、今から変更はできないものでしょうか。野田は不届きなやつです」。最後に「女房の話なんですけど、電話連絡があった時、うちの家内が満面の笑みで『よかったね、お父さん』と言ってくれました。それが1番うれしかった」とあいさつすると、会場に温かい空気が広がった。

橋爪と野田は、二人芝居をやるなど、長い親交がある。そんな二人だからできる、掛け合いのようなやりとりが、贈呈式というセレモニーの雰囲気を一気に和らげた。