巷では「予言の書」と呼ばれ話題を呼んでいる小説「首都感染」の作者高嶋哲夫さん(70)が、本紙の直撃に応じ、東京五輪強行開催へ警鐘を鳴らした。

「首都感染」は2010年に発表されたフィクション。近未来の中国でのサッカーW杯の開催中、同国内で高致死率の新型インフルエンザウイルスが発生するというストーリーだ。感染拡大阻止のため、日本の首相が東京封鎖を決断。ストーリーの内容、数々のキーワードが現状と共通することから、今になって「予言の書」として注目を集めている。

 作者の高嶋さんは、あくまで私見としながら「東京五輪を開催したら大変なことになると思う。五輪は感染者の統計が出ていないアフリカ、南米などを含め世界レベルで考えることが必要です。日本国内で騒動が終息しても、あと何か月でアフリカなんかがバタバタしてきたところで、その国の選手を入国させられるだろうか」と、持論を展開。五輪開催ありきの空気にくぎを刺した。

 逆に春のセンバツ高校野球に関しては、球児たちの心情をおもんぱかった。「閉鎖空間ではないので、やらせてあげればいいのに。感染対策を万全にし、球場には両親や関係者だけ入場可能にして。テレビ放送もやれば経済も動く」と開催に肯定的だった。

「首都感染」は2013年に文庫化されており、9刷3万5000部のロングセラー。それが発表から10年後、さらに1万部を超える増刷という異例の事態となっている。高嶋さんは「人類の不幸で話題になるのは本意ではない。今はウイルス自体を研究しWHOが適切な情報、処置を拡めてほしいと思う」とコロナ騒動の終息を願っていた。