中村勘九郎(38)中村七之助(37)が7月18、19日に、東京・浅草公会堂の舞台から「歌舞伎生配信特別公演」を行うことが28日、分かった。実際の劇場を使った歌舞伎の生配信は初めて。勘九郎の長男勘太郎(9)次男長三郎(7)が同劇場に初めて立つほか、中村鶴松(25)も出演。

歌舞伎配信はこれまでにもあったが、新型コロナウイルス感染防止のため、劇場舞台を使うことは難しかった。オンラインで取材に応じた勘九郎は「早く舞台に立ちたい思いが強かったので喜びがあります。楽しんでやりたい」。初配信公演に七之助は「画面の向こうで見てくださっているイメージを持って踊りたい」と話した。

演目は「猿若揃江戸賑(さるわかそろうえどのにぎわい) 厄祓浅草祭」で、軽やかで粋な清元の曲で踊る舞踊「お祭り」を基に新しく構成した。「お祭り」には、客席から「待ってました!」の声が掛かり、役者が「待っていたとはありがてぇ」と応じて沸かせる場面がある。演目を決めた理由を、勘九郎は「やっぱり『待ってました』じゃないかな」と、役者、観客双方の思いを代弁した。

浅草は2人にとって縁が深い。父中村勘三郎さんが平成中村座を立ち上げた土地であり、若手時代は浅草公会堂で新春恒例公演で鍛えられた。勘九郎は「青春の場」。七之助は「初心を忘れるなと言われているような気がします」と気を引き締めている。

中村屋一門で舞台に立てる喜びはこの上ない。9月の全国巡業公演は、17カ所すべてが中止になってしまった。勘九郎は「寝る前に激しく不安が襲ってくることもありました。もう休みたくない。歌舞伎がこんなにも自分を支えてくれていたのか」と語った。逆境の中での配信という試みに、七之助は「歌舞伎を知っていただくきっかけになるといい」と、可能性も感じている。

勘太郎、長三郎も久しぶりの舞台を楽しみにしている。外出自粛期間中にみっちり稽古できた成果も見どころだ。

◆「中村勘九郎 中村七之助 歌舞伎生配信特別公演」 7月18日午後1時、19日午前11時、イープラス「Streaming+」、チケットぴあ「PIA LIVE STREAM」で配信。3000円。7月1日発売。「猿若揃江戸賑 厄祓浅草祭」、芸談、中村屋ヒストリー映像など。