虎の若き4番が上り調子だ。開幕直後は控えに回ることが多かった大山悠輔内野手(25)は7月からスタメンに固定されるようになり、規定打席未到達ながら8本塁打はリーグ4位。「ついに目覚めましたね。リラックスして自然体でいれば、彼はそれだけで打てるんです」と目を細めるのは大山の母校・白鴎大学の恩師でもある岡田晴恵教授だ。

 新型コロナウイルスの感染再拡大に伴い“コロナの女王”岡田教授も連日メディア出演などで多忙を極めているが、教え子の活躍は何よりの励みになっている。「感染が再拡大しつつあり、正直落ち込むことも多いですが、大山君が元気でやっている姿を見ると本当に癒やされます。もう『心のともしび』のような存在ですよ、私にとっては」。同大学野球部と長年深いかかわりを持つ岡田教授は、入部当初から大山の素質と人間性を高く評価してきただけに感慨深い。

 遠く離れた地で奮闘する教え子のために“陣中見舞い”も届けた。白鴎大野球部の関係者にも相談を重ねた上で、最終的に送ったのは数万円相当のクオカード。「この時期、食べ物は足も早い。ネクタイなんかも考えましたが好みもありますしね。肉類が好物と聞いていたので『お肉券』なんかも検討しました。でも、自炊する暇が彼にあるのかなと。自分の時間すべてを野球にささげてしまうタイプですから。いつでもどこでも気軽に使えるクオカードが最適かなと思いました」。シンプルで奇をてらわない贈り物の背景には、恩師なりの深い思慮と思いやりが詰まっている。

「今、世界ではものすごい勢いでワクチンの開発や臨床試験が進んでいます。今年の春くらいの段階では東京五輪の開催は正直無理なのかなと悲観していましたが、今は希望を持っています」と岡田教授。大山は白鴎大在学時に大学日本代表に選出された。当時の喜びは今も心に焼きついている。「大山君が(侍ジャパンの一員として)東京五輪で戦う姿? もちろん見たいに決まってますよ。でも変な書き方しちゃダメよ。彼にはこれ以上重圧をかけたくない。リラックスして彼らしくやってくれれば。そして幸せであってほしい」。岡田教授は心から大山を応援している。