2020年も出演映画が5本を数えるなど、数年前から出演作が途切れることがない俳優の成田凌さん。現在、放送中の連続ドラマ「アンサング・シンデレラ 病院薬剤師の処方箋」(フジテレビ系、木曜午後10時)でも、出演予定だった清原翔さんが病気により急遽降板するというアクシデントがあるなか、代役として、将来に不安を抱えながらも自分の道を探していく薬剤師・小野塚綾を好演している。出演作が続くのにはワケがある……成田さんと一緒に仕事をした人たちの証言と彼のフィルモグラフィーをたどりながら、その理由を考察していきたい。
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男性ファッション誌「MEN'S NON-NO」(集英社)のモデルとしてキャリアをスタートさせた成田さん。2014年に俳優デビューを果たすと、中性的な魅力も相まって出演作を重ねていく。2016年には熱狂的なファンを多く獲得した連続ドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」(TBS系)で、石田ゆり子さん演じる外資系化粧品会社のキャリアウーマン・土屋百合(ゆりちゃん)の部下・梅原ナツキを演じ、ラストで梅原の衝撃の事実が明かされると、これまで演じてきた成田さんの繊細な芝居にファンからは「そういうことだったんだ」と称賛の声が上がった。
その後は、映画俳優として作品ラッシュ。「キセキ-あの日のソビト-」(2017年)では、劇中で菅田将暉さん、横浜流星さん、杉野遥亮さんと「グリーンボーイズ」を結成するバンドメンバーを演じると、「コード・ブルー~ドクターヘリ緊急救命~」シリーズで、フライトドクター候補生の灰谷俊平に扮(ふん)した。心優しくいろいろなところに目が届くが、自分に自信がなくやや消極的な青年をナイーブに好演してみせた。
続いて映画「スマホを落としただけなのに」(2018年)では、天才ハッカーであり、強烈なサイコパス・浦野善治を怪演し、大きな反響を呼んだ。この年、成田さんは、同作をはじめ、趣の違う役柄で挑んだ6本の映画が劇場公開され、第42回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞するなど一気にブレーク。しかし本人は新人俳優賞受賞時のインタビューで「未熟さばかりが残った年だった」と反省を口にした。
未熟さについて「一生懸命やるのは当たり前なのですが、それだけでいいわけではない」と向上心の高さをのぞかせる。さらに、演じるキャラクターを熟考して作品に臨むが、現場ではまっさらな状態にリセットして、どんな形でも対応できるように心がけているというのだ。
ストイックさと臨機応変さを持ち、俳優業に臨む成田さんは、2019年も劇場公開映画6本を数えるなど、さらなる活躍を見せる。
映画初主演となった「カツベン!」(2019年)では名匠・周防正行監督が、参加100人を超えるオーディションの中から成田を抜てき。その理由について「誰が演じたら主人公を大好きになれるかと考えたとき、成田さんが演じる(主人公の)俊太郎なら愛せるんじゃないかと思った」と語っていた。「カツベン!」に続いて主演を務めた映画「弥生、三月-君を愛した30年-」(2020年)でも、メガホンをとった遊川和彦監督は、成田さんについて「彼の情けない芝居が好き。話をしても面白い男だった」と起用理由を明かしている。
どちらの監督も成田さんの人を惹(ひ)きつける人間的な魅力を挙げていたが、確かに芝居において、「スマホを落としただけなのに」のサイコパス・浦野のような、たとえどんな強烈なキャラクターでも、なぜか目で追ってしまうような愛らしさを感じさせるのは、成田さんの持つ人間的な魅力がキャラクターに色濃く反映しているからなのかもしれない。
前述したように、「アンサング・シンデレラ 病院薬剤師の処方箋」では、清原さんの代役としての出演となったが、自身が薬剤師であるということを隠して、石原さとみさん演じる薬剤師の葵みどりらと出会った中華料理屋での柔らかい表情と、その後、自身の理想を押し付けてくるみどりに食ってかかるような攻撃的な部分、さらに自分の弱い部分と向き合い前向きさを垣間見せる表情など、多面的な人物像を表現していたが、そのどの顔も視聴者が共感できる愛らしさを持っている。
今後も、「糸」(8月21日公開)では、主人公・漣(菅田さん)の幼なじみで親友の竹原直樹をさわやかに、「窮鼠はチーズの夢を見る」(9月11日公開)では、大倉忠義さん演じる大伴の大学の後輩で、大伴に熱烈なアプローチをするゲイの青年・今ヶ瀬をねっとりと演じるなど、話題作が続く。
近い世代には菅田さん、竜星涼さん、神木隆之介さん、竹内涼真さん、福士蒼汰さん、野村周平さん、間宮祥太朗さんら一線級で活躍する俳優が多いが、成田さんは今後の映像界を引っ張る存在になっていくことは間違いないだろう。(磯部正和/フリーライター)
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