秋元康氏が総合プロデュースする劇団4ドル50セントの本西彩希帆(もとにし・さきほ=22)がこのほど日刊スポーツの取材に応じ、主演舞台「ゾンビランドサガ stage de ドーン!」(5日初日、東京・草月ホール)への意気込みを語った。

当初は今年3月に上演予定も、新型コロナウイルスの影響を受け公演自粛に。一度は絶望に沈んだが、ゾンビのようによみがえった。同作は、18年に放送されたアニメの舞台化。ゾンビとして同じ時代によみがえった少女たちが、佐賀県のご当地アイドルとして活動する様子を描く。本西は主人公の源さくらを演じる。

-稽古の近況は

本西 公演が延期になる前に、ライブパフォーマンスは全曲やっていたので、さらにお芝居面を詰めていくみたいな稽古が多くて。アイドルグループだから、謎に行動がそろっちゃうみたいな団体芸もあるんですけど、かなり緊張感があって。今は、ちょっとしたミスでもお互いが遠慮なく言い合える環境ですね。

-以前の稽古初日から、本西さんはセリフを全て覚えている状態で、皆さんを驚かせていたとか

本西 主演なので。主演がセリフ入ってないとやばいと思って(笑い)。

-3月公演は、上演直前で公演自粛が決定しました

本西 最初はめちゃめちゃ落ち込みました。(公演延期などの)先が約束されていたわけではなかったですし。さくらちゃんは、いわゆる「持ってない」気質なんです。私も「持ってない」んだなって思いましたし、「私が主演じゃなかったら自粛になってなかったんじゃないかな」ってネガティブに思ってしまいました。

-作品への思い入れが強い分、ショックも大きかった

本西 自粛発表の次の日に、稽古場に荷物を取りに行ったんです。みんなは「大丈夫だよ!」って明るく振る舞ってくれたんですけど、私1人だけめっちゃ泣いてしまって。みんなは「今回、彩希帆ちゃんがさくらちゃんでいてくれたから、みんな頑張れていたんだよ」って、優しい言葉をかけてくれました。

-いったんは「自粛」の発表だったので、再び上演される保証はありませんでした

本西 「絶対またやりたい!」って思いましたし、でも先が見えないし。信じることしかできなかった。一度は、気持ちがどん底まで落ちちゃいました。

-それでも、再び上演が決まりました

本西 うれしかったです。この状況の中でも、やると決めてくださったスタッフの方々や、一緒にやると言ってくださったキャストの方々。感謝しかなくて。

-以前とは心境に変化も

本西 3月の時は、とにかく自分が「うれしい! この作品をやりたい!」って気持ちが大きかった。でも今は、この作品に関わる全ての人のために頑張る、っていう気持ちです。視野が広くなったというか。

-公演自粛の経験を踏まえて、意識も変わった

本西 自分が誰のために何ができるか、もう一度考えました。厳しいことも、たまには言わなければいけない。今までは、その立ち位置をやってこなかったんです。この作品、絶対に次につなげたいし。初めての舞台化だから、ここが勝負なんです。葛藤もあるけど、主演として、カンパニーのみんなや作品に対して、指摘すべきことは指摘したりして。ちょっとは成長できたかもしれません。「主演がしっかりしないと!」っていう思いがあったので。

-カンパニーも引き締まった

本西 キャストの方全員がこのアニメが大好きなので、役を追求しています。映像では見せられない部分とか、アニメと違う、舞台オリジナルのシーンもありますよ。アンサンブルの方々も全員、作品に対して熱を持ってやってくれていますし。アニメの面白さもありつつ、舞台ならではの見どころもあるので、楽しいでいただけるんじゃないかなって思います!

-新型コロナウイルス感染防止を徹底した上での上演。劇場の観客数がキャパシティーの半分となるなど、さまざまな措置がとられています

本西 今は、仕方ないと思います。でも、客席が満員の熱を感じた舞台も知っている分、今は、いつか普通に舞台ができる時のための期間なのかな、って思います。だから、満席になっている時と変わらないくらいか、それ以上の熱量でやりたいです。

-新型コロナウイルスの影響は、演劇界にも直撃しています

本西 でも、「ゾンビランドサガ」のキャストには前向きな子が多いので、あんまりマイナスな話は出ません。舞台に立てるのがやっぱりうれしいですし、今回は全公演配信もやらせてもらえるので、そこをチャンスに変えられるようにやっていこう、って話をしましたね。前向きな周りの子たちに助けられました。その分、お芝居のこととかで誰かが落ち込んでいたときは、私が一番近くにいようって心掛けましたね。

-父で元プロ野球オリックスなどで俊足好打の外野手として活躍した本西厚博氏(58)の反応は

本西 なかなか深い話はできなかったんですけど、先月末に「明日から小屋(会場)入りだよ」という時に、「やっとできるね、よかったね」と言ってくれました。今回はスケジュールも詰まっていて、体をケアする時間も限られていたんですけど、寝る前に「ちょっといいかな? 肩がガチガチで…」とお願いすると、マッサージしてくれたんですよ。感謝しています。

-ご家族も応援してくれている

本西 はい。公演自粛になった時、家族は私と同じくらいショックを受けてくれたし、楽しみにしていた他の舞台もできなくなってしまって。母と伯父さんと、伯父さんの友達は、自分たちでチケット取って見に来てくれるんですよ! たくさん支えてもらっていた分、舞台で返したいですね。いろんな人に

-客席に観客がいる舞台に立つのは1月上演の「家族と呼ばないで」以来です

本西 みんながいたからここにいられます。舞台に立てます。劇場に来てくれる方々はもちろん、配信で見てくれる方々、一緒に舞台に立ってくれる方々、この状況で舞台をやると決めてくださったスタッフさんたち、この作品に関わってくれた全ての方に、感謝しかないです。舞台でお返ししたいです!

【聞き手・横山慧】