ついに未踏の領域に到達した。巨人が9日の中日戦(ナゴヤドーム)に5―4で逃げ切り勝ちし、原辰徳監督(62)は監督通算1066勝を達成した。巨人では川上哲治監督に並ぶ歴代1位の監督最多勝利数となり、86年の球団史に新たな歴史を刻んだ。大功労者の原監督には、早くも任期満了後のポストとして球団史上2人目となる「終身名誉監督」への就任も浮上している。

〝難産〟でつかんだ歴史的勝利だった。坂本の自身初となる3打席連続本塁打などで5点を叩き出したが、中日打線の反撃で1点差。必勝パターンの中川とデラロサを休養させていた中、8、9回を大竹、高梨の無失点リレーでどうにか振り切った。

 これで原監督は不滅のV9を達成した川上監督の勝利数「1066」に並んだ。ただ、普段は冗舌な指揮官も、すぐに言葉は見つからなかった。

「本当にまだ戦いなかばという中でね、どういうふうに考えてもなかなか言葉って出てこなくて…。感慨に浸るような余裕はないし、その気持ちっていうのは明日も変わらないでしょうね。今はまだ本当に突っ走ってる。その中でこういう数字に近づくことができたということですね。本当にそれしかないですね。今日のような勝負ばかりですから」

 今季で監督通算14年目。3期目初年度となった昨季は低迷したチームを再建し、監督として8度目となるリーグ優勝に導いた。異例のコロナ禍でのシーズンとなった今季も熟練采配で首位を走り、7月4日の中日戦(東京ドーム)で長嶋茂雄終身名誉監督(84)の1034勝に並び、同14日の広島戦(マツダ)で1035勝目を挙げて〝ミスター超え〟も果たした。ここまで42勝22敗3分け。貯金は今季最多の20となり、2位DeNAに8・5ゲーム差をつけて独走態勢を固めている。

 その指揮官の任期は昨季からの3シーズンで、延長にならない限りは来季で満了となる。早くも取りざたされているのは退任後のポストだ。球団関係者は「原監督ほどの大功労者です。何らかの大きなポストが用意されるのは間違いないでしょう」と語った。

 その有力候補の一つと目されているのが、球団内の〝最高位〟に当たる「終身名誉監督」だという。現役時代からスタープレーヤーとして活躍し、監督としての実績でも右に出る者はいない。球団への貢献度を加味しても〝必然の流れ〟と見られている。

 ただ、事はそう簡単に運ばない可能性もあるという。それは原監督が抱く恩師・長嶋氏への「畏敬の念」だ。「原監督が長嶋終身名誉監督と〝同格〟となることを『おこがましい』と思われれば、辞退されることも考えられます」(同)。となれば、相応の新たなポストを準備する必要も出てくる。

 偉業達成に際し、長嶋氏からは「原監督は、まさにジャイアンツの歴史を塗り替えた一番の名将になった」と、これ以上ない賛辞を贈られた。V2へも視界良好。単独1位となる〝川上超え〟も時間の問題だ。原監督がどこまで新たな歴史を切り開くのか、今後も目が離せない。