音楽ユニット「Foorin」のメンバーとしても知られる新津ちせの、10歳とは思えないコメント力に驚かされた。3日、都内で行われた映画「喜劇 愛妻物語」(11日公開)公開直前イベントの壇上で、新津は足立紳監督(48)、劇中で父を演じた浜田岳(32)と母を演じた水川あさみ(37)の大人3人も、タジタジのコメントを連発した。

足立監督は冒頭で「(映画館の)第1列しか客が入らない夢を見た。本気で不安。(妻と)毎日、近所の神社に大ヒットしますようにとお参りしてます。暗いこと言っちゃうけれど、適当に傑作だと書いてもらいたい。ぜひお願いします」と集まった記者に呼びかけた。すると、新津は「面白い映画なので全席が埋まることを願います」と監督をフォローした。

同作は、人気脚本家として知られる足立監督が、自ら著した自伝的小説を脚本、監督として実写映画化。うだつの上がらない脚本家の豪太(浜田)が、四国を舞台にしたシナリオを書くため、妻チカ(水川)と娘アキ(新津)とともに5日間の取材旅行に出る物語。

劇中では豪太がチカに罵声を浴びせられる場面が多い。新津は夫婦げんかが絶えない物語について聞かれると「台本だと分かっていても怖かった。早く終わってくれないかなと思った」と苦笑い。その上で「裏(撮影していない時)が、メチャメチャ仲が良くて、良かったなとホッとしました。裏では、いっぱい遊んだし、楽しかった」と笑みを浮かべた。子供とは思えないしっかりしたコメントの中で、子供らしい一面も垣間見え、集まった取材陣の視線も新津に集まった。

最も、驚かされたのは、最後のあいさつだった。

「夫婦だからとか、形じゃなく、信頼が積み重なって、夫婦、家族と言うと思う。この映画を見たら家族の概念が変わると思う」

10歳とは思えない達観した夫婦観を語った新津に、水川は「ちせが素晴らしいことを言ってくれた。夫婦は、他人と他人が寄り添っていく、変てこなものだけど、面白く、すてきなんだということが伝われば良いと思う」と語った。浜田も「ちせちゃんの言うとおり」と同意しつつも「自分の順番が来るのが…心臓が痛くてしょうがない」と、新津のコメント力の高さに、感じたプレッシャーを吐露した。

新津の父は、日本映画歴代2位の興行収入250億3000万円を記録した16年「君の名は。」や19年「天気の子」を手掛けた、アニメーション監督の新海誠氏(47)であることは周知の事実だ。記者は新海監督も何度かインタビューしたことがあるが、非常に穏やかな人柄だ。ひと言、ひと言、かみしめるように語る言葉は、人を思いやる、血が通った温かさがあり、また自身の中から生まれた、オリジナリティー、独自の世界観も垣間見える。

新津は10歳という年齢もあり、子供らしく、よりストレートで、はっきりとした物言いだ。そのコメントが、年齢を重ねて行くにつれて、どう変わっていくかに興味がある。今、そして未来…年齢を重ねていく新津を、取材し続けてみたいという思いが湧いている。