すでに今季限りでの現役引退を表明しているヤクルト・五十嵐亮太投手(41)が25日、引退試合となった中日戦(神宮)で0―4の8回に4番手で登板し、打者1人をきっちり抑えて有終の美を飾った。

 日米通算906試合目のマウンドでも、五十嵐は「らしさ」を見せつけた。「引退を撤回するぐらいの勢いでやりたい」と宣言していた通り、打席のシエラに迷わずストレートを投げ込んだ。2004年に記録した当時の日本最速タイとなる158キロには程遠かったが、魂のこもった143キロはうなりを上げた。

 シエラも負けじとフルスイング。打球は強烈なライナーとなって三遊間に飛んだ。するとメジャーでゴールドグラブ賞に輝いた経験もある三塁手のエスコバーが横っ飛びで好捕し、すぐさま一塁へ送球。やや本塁側へ逸れたボールを一塁手の村上がつかみ、シエラをタッチアウトにした。

 再びベンチから高津監督が姿を現すと、マウンドを中心に輪ができた。野手一人ひとりとあいさつを交わし、最後は指揮官とハグ。出番を終えた五十嵐は帽子を手にした右手を高々と掲げ、中日ベンチとスタンドの全方向に頭を下げた。

 一塁ベンチでは「ロケットボーイズ」として一時代を築いた石井投手コーチ、ベンチ脇の通路からは同級生で登板予定のない石川が目頭を熱くしながら最後の雄姿を見守った。

 スタンドには22歳下のドラフト1位ルーキー・奥川の姿もあった。マウンドで多くの感動を与えてきた剛球投手は、最後までその生きざまを貫いた。