価値ある10勝だ。ソフトバンクのエース・千賀滉大投手(27)が28日のロッテ戦(ペイペイドーム)で8回12奪三振で無失点と好投。球団では摂津正以来となる5年連続2桁勝利を挙げた。

 10月は4試合に投げて防御率0・00。勝ち星はトップの楽天・涌井に1差で、防御率と奪三振はオリックス・山本に次ぐ2位だ。規定投球回クリアまであと7イニングと迫り、投手3冠の可能性も出てきた。

 今季は故障の影響で開幕に出遅れ、新フォーム変更がうまくいかず、ふがいなさから日常生活で「エース千賀」の字面を見ることにすら拒否反応を示した。「前半戦、僕は(防御率)4点台の投手」と振り返り、チームに貢献できていないという自己評価は今も変わらないという。だが、ここにきての快投連発にも球団内に驚きは少ない。

 本人の評価とは対照的に、チーム内では数字以上に右腕をたたえる声が多い。「ビジターばかりで投げていたイメージ。週頭の登板を昇格後一度も外れず、特殊な日程の中で移動や調整の難しさを乗り越えての成績で価値がある」(チーム関係者)。7月7日の今季初登板以降、14週連続で6連戦の頭を担った。ここまで17試合で、うち10試合が敵地。週頭に遠征が多かった日程の事情もあり、新型コロナ禍の登板前日移動、遠征先によって〝上がり日〟が登板2日目だったり、3日目だったりと本人にしか分からないであろう調整上の苦労もあった。サプリメントを摂取するタイミング一つとっても、ルーティンが崩れることを嫌う選手は多い。こういった事情を関係者やチームメートは把握しているからこそ〝数字以上〟の貢献を認めている。

 残り8試合で登板機会は恐らく1度だけ。千賀は「次もしっかり投げたい。投げられるんだったら規定はいきたい」と鼻息を荒くしている。