来年2月から改装工事が始まる新宿・紀伊国屋ホールには、演劇記者生活を送った40年間、毎月のように通った。

1964年に開場した同ホールで最多上演回数514回を数える、つかこうへいさんの「熱海殺人事件」は、ここで10回以上も見ている。木村伝兵衛部長刑事も風間杜夫、池田成志、阿部寛、石原良純、山崎銀之丞、馬場徹、味方良介、そして女性版の黒谷友香など、ほとんどのバージョンを見ている。

現在、都内に劇場が数多く出来たけれど、小劇場系の劇団にとって、紀伊国屋ホールは、「演劇すごろく」のあがりのような存在だった。野田秀樹の「夢の遊眠社」も、鴻上尚史の「第三舞台」も、三谷幸喜の「東京サンシャインボーイズ」も、旗揚げ当時は紀伊国屋ホールでの上演が夢で、目標だった。

開場の2年後の66年に紀伊国屋演劇賞が創設されたが、最近の同賞の授賞式で受賞者のあいさつで聞くのは、「紀伊国屋ホールで舞台をよく見ていた」という言葉だった。ここで演劇の面白さを知り、そしてこの舞台に立つことで育てられた俳優たちが数多くなってきた。

4カ月ほどの改装工事を経て、早ければ6月にも新しく生まれ変わった紀伊国屋ホールでの公演が始まる。そこで、どんな名作舞台が生まれるのか。しばらくは紀伊国屋ホール通いが続きそうだ。