大みそかの格闘技イベント「RIZIN.26」(さいたまスーパーアリーナ)で、2016年リオ五輪レスリング男子グレコローマン59キロ級銀メダルの太田忍(26)が注目のプロデビューを果たす。初挑戦となる総合格闘技(MMA)ルールで対戦する所英男(43)との大一番に向けて本紙の独占インタビューに応じ、MMA転向を決めた経緯や今後の目標を激白。「忍者レスラー」が目指す〝あの大物〟とは――。

 ――相手は百戦錬磨の大ベテランだ

 太田:大好きでリスペクトしている選手なので試合はずっと見てきました。勝ちに貪欲、かつ見せる部分もある根っからのファイターだと思います。その所選手に勝てば「MMAができる」っていう評価を得られる。ステップアップできるような試合になればと。

 ――MMA転向を意識したのは

 太田:リオが終わってからです。RIZINに呼んでもらって解説をさせてもらったり、試合を見させてもらったりして「すごい華やかな世界だな」って。その前も「MMAをやりたいな」というのは何となく思っていましたけど。確信に変わったのはリオの後です。

 ――子供のころからMMAが好きだったそうだが、憧れの選手は

 太田:ミルコ・クロコップ(46=クロアチア)ですね。ミルコとケビン・ランデルマン(故人)の試合が大好きだったんですよ。2004年ですけど、最初(4月に)ランデルマンがパウンドアウト(KO)して、そのリマッチで(大みそかに)ミルコがフロントチョークで勝ったんです。その時のミルコの筋肉がバキバキで、小さいながら好きでしたね。10歳だから、小学生の時ですね。

 ――MMAでの目標は

 太田:UFCチャンピオンっていうのは、世界で一番強いMMAファイターの称号だと思うので目指したいです。まだ一戦もしてないやつが「UFCチャンピオン」とか言える立場じゃないですけど、目指していかないと強くなれないので。

 ――なるほど

 太田:MMAファイターとして成功して、キラキラした人生を歩むことができたら「あいつみたいになりたい。じゃあ、レスリングやろうかな」ってなる子供も出てくると思うし、「続けて頑張ればこうなれるんだ」って思う選手も出てくると思うんです。「あいつみたいになりたい」って思われる選手、人間になりたいと思っています。

 ――そういう意味で憧れる人は

 太田:ビル・ゲイツ! 言い方は悪いかもしれないですけど、選手の価値ってお金にも比例してくると思っていて。日本って「アスリートは金を稼いだらいけない」みたいなイメージがあるけど、アスリートだってそれが評価だと思ってるだろうし、それがリアルだろうし。いくら五輪でメダルを取っても生活できなきゃ意味がないから。日本のアスリートの価値を高めたいっていう気持ちもあって。もちろん、一番は自分が成功したいっていうことですけど。

 ――MMAの練習は楽しいか

 太田:楽しいか苦しいかっていったら半々です。しんどいけど、自分ができることが増えていくっていうのはうれしいことだし。いろんな人にお願いして、いろんなところに出稽古に行って。それを受け入れてくださるのはありがたいです。

 ――〝バカサバイバー〟こと青木真也(37)とも練習をしたそうだが、目的は寝技の強化か

 太田:そこを目的としてお願いして行きました。全然遊ばれている状態で、決まりそうになったら力抜いてくれる感じです。「ここをこうしたらいいんじゃないか」とか、青木さんが今感じてることとかを教えてくれるので、すごく勉強になります。

 ――打撃と組み技の練習の割合は

 太田:半々です。1日24時間じゃ足りないですよ! 休憩もしなきゃいけない、飯も食わなきゃいけない、寝なきゃいけないし。50時間くらいほしいです、1日が。

 ――最後にプロデビュー戦への意気込みを

 太田:できれば見せる試合、盛り上げる試合をしたいですけど、勝つことを最優先に戦っていきたいと思います。

☆おおた・しのぶ=1993年12月28日生まれ。青森県出身。小学1年時に八戸キッズ教室でレスリングを始める。山口・柳井学園高時代の2010、11年に全国高校生グレコローマン選手権連覇。日体大に進学し、12年世界ジュニア選手権でグレコ55キロ級銅メダル。15年全日本選手権グレコ59キロ級を制すると、翌年のリオ五輪で同級銀メダルを獲得した。19年世界選手権グレコ63キロ級で優勝。165センチ。