体操の全日本選手権(10日開幕、群馬・高崎アリーナ)の前日練習が9日に行われ、女子エースの村上茉愛(24=日体クラブ)が初挑戦の技への思いを口にした。

 新型コロナウイルス禍で前代未聞の一年となった2020年。自粛生活の春先を「すごく心が揺さぶられ、荒れていた」と振り返るが、大技取得という面ではむしろ飛躍の年になった。

 今大会、村上は跳馬でチュソビチナ(前転跳び前方伸身宙返り1回半ひねり)に挑戦。これまで取り入れてきたユルチェンコ2回ひねり(ロンダート後転跳び後方抱え込み宙返り2回ひねり)よりもDスコア(演技価値点)が0・4もアップする。9月の全日本シニア選手権後に本格的に練習を開始。日体大の練習場では順調に跳べているが、8日には「人生で初めて試合会場で跳んだ」といい、その瞬間を「走り出す前に心臓がバクバクするくらい緊張した。新しく跳ぶ技ってこういう感じなんだなって実感できた」と振り返った。

 今大会は新型コロナウイルス禍により8か月遅れの開催。スポーツ界を取り巻く現状について「世の中の状況でどうなるか誰も分からない状態。大会があると言われても、明日にはどうなるか分からない。この状況はこれからもあると思う」と冷静に受け止めている。

 来年夏の東京五輪に向けて、村上は「4つのメダルを獲得する目標は何も変わらない。1年延びたことによって新しく挑戦できる技も習得できた。五輪のメダルを意識してやっている演技を見てもらいたいです」と目を輝かせる。まずは全日本で最高の結果を出し、次の「夢」へつなげたい。