体操の全日本選手権(群馬・高崎アリーナ)は12日、女子決勝が行われ、予選トップ通過の村上茉愛(24=日体クラブ)が個人総合で合計112・097点をマークし、2年ぶり4度目の優勝。昨年は腰のケガでドン底を見たが、名実ともに日本一の座を奪回した。 

 絵に描いたようなスタートダッシュだった。決勝の最初の種目・跳馬では「五輪が延期になって本気で取り組んだ」というチュソビチナ(前転跳び前方伸身宙返り1回半ひねり)を体操人生で初めて成功させた。予選ではラインーバーして悔しさをにじませていたが、この日は15・200点の高得点。これで勢いに乗った村上は、その後の段違い平行棒、平均台、床とミスなくまとめ、栄冠を手にした。

 試合後、村上の目に涙はなかった。「予選1位通過して最終演技者っていう感覚が久しぶり。楽しかったし、みんなに見せつけたい思いで頑張りました」。昨年は腰のケガもあって世界選手権の代表から外れ、今年は新型コロナウイルスが世界を襲った。

 次々に困難が訪れたが、それを乗り越えるたびに強くなった。この日の勝利を「想像もしないことが起きてもできるっていう自信になった」と胸に刻み、最大の目標でもある東京五輪へ打って出る。

「毎日ちゃんと練習していれば、いつか目の前がパッと明るくなると信じている」

 体操人生集大成の夏へ、エンジンがかかってきた。