神奈川県の平塚競輪場で30日、賞金1億340万円と輪界最高の称号をかけた戦い「KEIRINグランプリ2020」が行われた。競輪界珠玉の一戦は、4角内を突いて伸び切った和田健太郎(39=千葉)がGP初出場初優勝。千葉勢としては2009年の海老根恵太以来となる快挙を成し遂げた。

 決して優雅な道を歩いてきたわけではない。泥臭く、若いころは大物食いを持ち味としたピラニアのような存在だった。デビューから18年をかけてのグランプリ初出場。驚きの1着ゴールを駆け抜けた。「うれしい、の一言です」。いつまでも興奮は冷めやらぬ様子。息を弾ませてレースを振り返った。

「競輪祭決勝のこと(前に離れた)があったので、とにかく郡司(浩平)君についていこう、と集中していた。すべては郡司君の直感というかひらめきに任せて」

 最終HS5番手を確保した郡司は、1センターから強引に仕掛けたが、3、4番手にいた中国勢のヨコで止まる。和田は「もう内しかない」と見極めると、清水裕友の動き、平原康多のブロックの間隙を突いて、4角、直線を鬼のように突き抜けた。

 チャンピオンジャージーをまとう一年を前に「非常に気が重い」と正直な思いを口にしたが「責任もあるので果たせるように」と全力で挑む。

 来年は千葉競輪場が新しく生まれ変わり「250ケイリン」が誕生する予定だ。「地元で始まることだし、参加するつもりでいます。自分が行くことでいい刺激を与えられるなら」と新たな試みにも、尽力していく。

 昨年は佐藤慎太郎、そして今年は和田の優勝で3連単22万円超の波乱決着。ナショナル勢を中心にした自力選手が目立つ中で、ベテラン追い込み勢が重ねた勝利。あまりの奥深さに、競輪ファンは今年も酔いしれた。