NHK大河ドラマで家康が単独の主人公として描かれるのは、滝田栄(70)が演じた83年の「徳川家康」以来40年ぶり。関ケ原の戦いから400年後の00年に放送された「葵徳川三代」でも津川雅彦さんが家康を演じたが、秀忠、家光の3人が描かれた。

家康は信長、秀吉とともに戦国時代の三英傑の1人だが「たぬきおやじ」と呼ばれるなど、狡猾(こうかつ)なイメージもつきまとう。脚本を務める古沢良太氏も「超ベタな偉人なのに信長や秀吉と比べてなぜか人気がないような。ずるがしこく立ち回ったあげく棚ぼたで天下が転がり込んできたイメージだから?」と指摘する。だが「それこそが私が家康にひかれる理由」だという。

「カリスマでも天才でもなく、野心家でもない繊細な若者が、必死に悩み、もがき、滑って転んで、半べそをかきながらモンスターたちに食らいつき、命からがら乱世を生き延びてゆく。それこそ誰もが共感しうる現代的なヒーローなのではないか」と指摘した。

家康は乱世の世のリーダーとして、たくさんの「どうする?」を突きつけられてきた。判断ミスで苦杯をなめたが、決して逃げず答えを出し続け、徳川幕府を開き、乱世を終わらせている。コロナ禍や環境問題など、先行きの見えないのは現代も同じで、今作では家康を現代に通じるリーダー像として描く。

制作統括の磯智明氏は、古沢氏から「実は家康をやりたいんです」と切り出され、熱く語られたと明かす。「教科書に書いてある鎮座するような家康ではなく、ピンチピンチの連続、ものすごい強敵たちの登場ですでに『どうする家康』のドラマがありました。令和版へアップデートした、新たな家康像になると思います」。そして古沢氏から「松本潤さんなら、きっと明るい家康になりますよ」と言われたという。「家康は逆境に負けない明るい人物なのかもしれません。松本さんなら乱世を終わらせ、エネルギッシュな家康を演じていただけると確信しています」とコメントした。

撮影開始は22年夏の予定。

○…現在放送中の大河ドラマ「麒麟がくる」では家康を風間俊介が演じている。最近では、17年「おんな城主 直虎」では阿部サダヲ、16年「真田丸」では内野聖陽、14年「軍師官兵衛」では寺尾聰、11年「江~姫たちの戦国~」では北大路欣也が、それぞれ家康を演じている。