Kiroroの金城綾乃(43)を1日、取材した。金城は、福島県いわき市の「いわき震災伝承みらい館」を訪問し、東日本大震災の津波被害からよみがえった「奇跡のピアノ」と、約1年ぶりに再会した。金城が同ピアノを題材に作詞作曲した新曲「奇跡のピアノ」の楽曲誕生を報告し、同曲を初歌唱した。

歌唱した金城の目からは、大粒の涙があふれた。「思いを寄せすぎると、いろんな風景が浮かんできてしまう。家族を失われた方の気持ちに寄り添う分だけ、痛みや悲しみがやってくる。私にとっても、パワーがいる曲になりました」。

筆者は、昨年は社会班、今年は芸能班として、2年連続で被災地に足を踏み入れた。昨年、実際に初めて自分の目で見た現地の景色、取材した人たちの貴重な話を聞き、これをどうにかして伝えたいと強く思ったことを覚えている。

1年延期された東京五輪。政府は“復興五輪”とうたっている。

金城は、印象に残っている歌詞に「見えているものが全てじゃないから 隠れて見えない大切なものは何?」を挙げた。

質問した身だが、この答えに非常に共感した。大きく言えば復興へ向かっているように見えるが、一歩踏み込んでみると、隠れて見えていなかったものが多々見えてくる。

金城は「この曲が、震災のことを考えるきっかけになったらいいなと思います。この曲を弾く度に、命のことを考えたり、震災だけでなく、日々の大切さ、毎日の出来事を伝えることができるのかな。たくさんの方に聞いてもらって、『みんなと過ごせている日々が大切なんだよ』と伝えていけたらと思っています」と、力を込めた。

震災当日、筆者は中学2年で卒業式の予行練習中だった。今まで感じたことのない揺れで、恐怖心を抱いたことは覚えている。しかし、実際にどのような被害があったのか、その時、被災者は何を感じたのか、具体的なことは知らなかった。

今後、記者より若い震災を知らない世代も増えてくる。これからも伝えていきたい-。改めて強く思った現場だった。